今、私たちは、真実と虚偽が区別されない社会に生きている。3億の米国国民と250万の海外同胞が日常的に口にする米国産牛肉が、韓国では突然「狂牛病(牛海綿状脳症=BSE)牛」に変身した。戦闘警察隊(日本の機動隊)に集団暴行を加え、記者や新聞社を攻撃する過激暴力デモは、「善」であると美化され、これを阻止しようとする政府の公権力の行使は、「悪」と追い込まれている。怪談が科学に勝り、虚偽が真実を抑えつける社会は、正しい道に進むことはできない。
誰が、何のために、このような非正常を助長するのか。2ヵ月近くデモを主導しているいわゆる「狂牛病国民対策会議」や、MBC、KBSをはじめとする一部メディアとインターネット・ポータルサイトがその中心にあることは周知の事実だ。これらが、「虚偽ウィルス」を撒き散らしている。
彼らは、本当に国民の食卓の安全と国家の発展のためにそうしているのだろうか。牛肉問題を取り上げることは口実にすぎず、本心は、李明博(イ・ミョンバク)政権打倒にあることが明らかになっている。民主主議制度下で、国民の選択で樹立した合法政権を否定し、座礁させるということだ。ここに、一部政界と、自分たちの既得権を守って世の中を自分たちの好みで料理しようとする左派団体勢力が大挙加勢している。東亜(トンア)、朝鮮(チョソン)、中央(チュンアン)日報を攻撃して、これらの新聞に広告を出す企業を脅迫することは、自分たちの目標達成に障害になるメディアを無力化させようという意図だ。
彼らの扇動詐欺劇に、多くの国民が目をくらまされている現実が残念だ。文化(ムンファ)日報が1日付で報じた世論調査の結果によると、61%の国民が、ろうそくデモの中止を望みながらも、政府の牛肉追加交渉にもかかわらず、狂牛病の危険が解消されていないと考える意見が64%もあった。ろうそくデモの過激化の原因については、44.7%が警察の過剰鎮圧のためだと言った。テレビや新聞、インターネット・メディアが伝える偏向・歪曲・虚偽の扇動に少なからぬ国民が誤った影響を受けているようだ。
牛肉問題だけを見てもそうだ。国民対策会議は、「政府が牛肉再交渉を聞き入れれば、事態は解決する」と言う。しかし、冷静に考えてみよう。政府はすでに2度の追加交渉を通じて、生後30ヵ月以上の牛肉の輸入を禁止し、米国国内の狂牛病発生時には牛肉輸入を中止するほか、生後30ヵ月未満の牛の狂牛病危険部位(SRM)などの輸入禁止部位を拡大し、米国国内の屠殺場監視権限の確保などを取りつけた。再交渉による国家的負担を避けつつ、実質的には再交渉に準ずる結果を引き出したのだ。
政府が、牛肉交渉を拙速に行なったことは誤りだが、交渉の過ちと狂牛病の危険は別問題だ。交渉の過ちに対しては、政府は、十分に罰を受けた。また、追加交渉を通じて、国民が不十分だと指摘した部分を補完することで、狂牛病の危険も実質的に遮断した。にもかかわらず、このような事実に背を向けて、狂牛病の危険を膨らませ、ただ再交渉だけを叫ぶ真意は何か。政府が受け入れることができない条件をつけて、李明博政権を圧迫し続ける意図と見ざるを得ない。
カトリック正義具現司祭団まで立ち上がり、ミサという名分で、ろうそくデモ隊を後押ししているのは残念だ。デモを非暴力に導くとは言うものの、「ろうそくが勝つ」というプラカードだけを見ても、その意図は容易に見当がつく。聖職者は、言行一つ一つに慎重にならなければならず、国民に真実だけを示さなければならない。司祭団が、反政府的暴力性を現わしているろうそくデモを擁護するだけでは足りず、その動力を活かすために尽力するような姿は、その本分に合わない。キリスト教と仏教界の一部進歩団体が、ソウル市庁前で時局祈祷会や法会を開くというのも同じだ。
政府を構成する主体が、しっかりと自分のすべきことに力を注ぐべきだが、国民も、今の事態を冷静に見つめなければならない。世界の国々が、光よりも速く進むこの時代の変化に後れないために、死活をかけた争いをしている。金融危機よりもひどい経済危機が襲ってくるかもしれないという警告も出ている。にもかかわらず、韓国は、牛肉問題に足をつかまれて身動きがとれず、大切な時間を無駄にしている。真実ではなく虚偽が幅を利かせ、国民が2分され、必死になって争っている。そのために、国政が2ヵ月間もマヒしている。
国民が立ち上がり、虚偽を排撃し、国家を正常に戻さなければならない。李明博政権に対する支持か反対かが重要ではない。いま重要なことは、国家と国民が生きなければならないという事実だ。国民が偽りに振り回されて付和雷同し、傍観者的な態度を見せるなら、国家を滅ぼす勢力に私たちの運命を任せなければならなくなるかもしれない。






