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[オピニオン]現大統領の備忘録

Posted December. 13, 2005 07:24,   

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備忘録とは、忘れたときに備え、暇あるごとに綴る記録だ。回顧録が簡潔性を持つ反面、備忘録は熟成しきっていないメモのレベルだと出版人たちは分類する。ところが、真実がものをいうという点では同様だ。数年前、ある前職大統領が回顧録を出したときのことだ。多くの要人たちは、自画自賛がひどく、間違ったことについて政敵に責任をなすりつけた部分が少なくないと指摘した。ある元老政治家は「マコトを1とすれば、ウソが9だ」と酷評している。

◆政治家とは、回顧録を多く出す人種だ。政治的な比重の大きかった要人であればあるほど、その手の誘惑に駆られがちであり、それにつけこんで出版社の商魂が手を差し伸べる。先般は、朴哲彦(パク・チョルオン)元政務長官が盧泰愚(ノ・テウ)政権時代に行われた南北接触と3党の連立などにからむエピソードを集めて本を出版したが、真相をめぐる疑念の声が上がった。直接当事者の回顧とは、ことほど客観性を認めてもらうのは至難の業だ。

◆大統領府の付属室で2年間行政官を務めていた李ジン氏が「参加政府、半分の備忘録」という本を出版した。02年末の大統領選直後、盧武鉉(ノ・ムヒョン)当選者が政治資金の不正を打ち明ける決心をしたものの、参謀らの反対で思いとどまったこと、不正疑惑にかかわった親戚を怒鳴りつけたこと、04年春、弾劾前後の大統領の心境など、さまざまな逸話が登場する。筆者は「盧大統領という島と国民という陸の間に橋を架けてみることにより、島をのぞき見ることができるようにした」と述べた。

◆しかし、本の全体を走る筋は、常識と良心に従って行動し、先頭に立って権威に立ち向かった盧大統領の人間的な姿だ。もう一つの「現実政治用」大統領賛歌という感じをぬぐい去ることができない。本物の大統領備忘録は、退任後かなりの時間が経った後、任期中にあった逸話や秘話をありのまままとめるものだ。功績と並んで、隠したい恥ずかしい過ちも率直に綴り、一時代の教訓となってはじめて備忘録は価値を得る。今回の備忘録は、出版される前に大統領と秘書陣が先に前もって読んだというのだから、最初から結局、広報物のつもりだったようだ。

宋煐彦(ソン・ヨンオン)論説委員 youngeon@donga.com