一部の国会議員による国家安保関連の発言をめぐって、与党ヨルリン・ウリ党と野党ハンナラ党の攻防が突拍子もない対決に変質した。問題の本質である北朝鮮の脅威に対する議論はまったく姿を消し、政争だけが激化している。ややもすれば安保の現実が歪曲されかねないという点から、与野党の理性を失った衝突に嘆かざるを得ない。
国民はたとえ最悪の状況だとしても、「韓国軍単独で北朝鮮の侵略を防ぐ場合、16日で首都圏が崩壊される可能性があるかどうか」を知りたがっている。国政の一軸を担っている国会なら、国民に代わってシナリオの実現可能性を徹底的にただすのが筋である。安保脅威の実態を究明することに比べれば、与党が主張する国家機密の漏洩や野党が主張する国民の知る権利は副次的な議論に過ぎない。
北朝鮮が軍事境界線近くに配置している長射程砲は現実的な脅威である。政府がどうして米国が撤退させようとした多連装ロケット弾部隊と対砲兵レーダーの前方残留を貫いたのか。政府自らが韓国軍単独では対応し難いと認めているからである。ハンナラ党の朴振(パク・ジン)議員が公開したシナリオも、国家機関の韓国国防研究院(KIDA)がまとめた。軍事機密まで漏らして脅威を誇張し国民を不安にさせたと非難するような事ではない。どれほど危険なのか、対策は何なのかをただすのが国会の義務であるはずだ。そうしてこそ、対策作りのために国防費の増額が必要だと国民を説得することができる。
ウリ党は野党議員への攻撃に没頭する代わりに、国家と国民が安全なのかを確認することに力を注がなければならない。安保脅威を提起した野党議員を「スパイ」という言葉まで使って非難する政党を、誰が与党らしいと思うだろうか。
国の現実を的確に把握するのがまさに政策国政監査である。与野党は底の知れた政争を直ちに止めて、安保脅威の実態究明に取り組んでほしい。朴議員の発言が国家機密を漏らしたものなのか、免責特権で保護されるべき対象なのかは関連法に従って判断すれば良い。






