康祐碩(カン・ウソク)監督の『実尾島(シルミド)』が封切り2週間で全国観客370万人を記録して、邦画史上最短期の興行成績を挙げた。82億ウォンの製作費が投入されて製作段階から話題を集めたりはしたが、ハリウッドブ・ロックバスターである『ロード・オブ・ザ・リング』と競って興行突風を起こしていることは驚くべきだ。製作当時、知り合いの康監督に「この頃の観客たちは冷戦時代の事を蘇らせたがる」と懐疑的に言った筆者としては照れくさいことでもある。
◆驚くべきことは普段映画をあまり見ない40、50代の観客が多く、若い女性たちが涙を流して劇場を出るということだ。つらい訓練を乗り越える過程と深い戦友愛、自爆で生を終えるラスト場面などを感動的に描き出した演出の力であるだろう。ある女子大生は「国が捨てた人々に対してはどんな形であれ補償をしなければならないのではないか」と声を高めた。さらにある女子中学3年生は「本当に70年代我が国にあんな事があったのか」と問う。
◆映画『実尾島』は、中央情報部が1968年「大統領府を襲いに来た」北朝鮮の124軍部隊への仕返しとして「金日成(キム・イルソン)の首を取るために」結成した空軍684部隊の実話を土台とした作品。「行くところまで行った」人たちである部隊員31人は実尾島で殺人兵器になるが、韓半島情勢の変化でおよそ3年で捨てられる。最後まで生き残った24人は71年8月 23日に機関兵を射殺してバスを奪い取った後、悔しさを訴えるために大統領府に向う途中、ソウル大方洞(テバンドン)で最後を迎える。当時、中学生だった筆者は家に帰る途中に現場を目撃したが、真実が分かるはずがなかった。「ゲリラ」とまで呼ばれた彼らは93年4月号「新東亜(シンドンア)」を通じてはじめてその実体が知られる。
◆康監督は「1000万観客」と日本での成功を期待すると言う。実尾島で犠牲にされた英霊たちが助けてくれたら不可能な数値でもないだろう。現代史で幾多の苦難と葛藤を味わった韓国は「実尾島事件」の他にも映画化する素材が多い。意識ある監督と力量ある俳優たちがいる限り、悔しく歴史の裏に消えてしまった英霊たちは必ず再評価されるだろう。監督と俳優、スタッフの苦労をねぎらうとともに、慎んで「684部隊員」たちの冥福を祈る。
吳明哲(オ・ミョンチョル)論説委員 oscar@donga.com






