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[オピニオン]「75億ウォンのキャッシュ」

[オピニオン]「75億ウォンのキャッシュ」

Posted November. 07, 2003 23:35,   

「お金の単位が大きいほど予算を削るのが難しくなります。1億ウォン未満の場合は、必要か否かがすぐ判断できるのですが、億単位を超えると、その規模の見当がつかなくなるので、自信がなくなります」10年以上ものあいだ予算業務に携わってきたある公務員の話。与野党を問わず、次々と明るみにでる数十億、数百億ウォン単位の政治資金疑惑を見守る国民も、同じような混乱を覚えているはずだ。まったく実感が湧かない金額であるため、どれだけ憤りを覚えればいいのか、見当をつけることすらままならない。たまたま発生した2つの事件がなければ、見過ごしていたかもしれない。

◆昨日の朝刊を読んだ読者なら、居間の上にうず高く盛られている札束の写真に目が止まった事だろう。一生、1億ウォンの現金を目にすることすらままならない私たちにとって、75億ウォンもの現金を目にする機会があるだろうか。それも、近々現金40億〜50億ウォンを積んだ「ダイナスティー(高級乗用車)」の走る姿を見ることになるかもしれない。現代グループの秘密資金200億ウォンを受け取った疑いで起訴された、權魯甲(コン・ノガプ)前民主党顧問に対する公判で検察と弁護人が舌戦を繰り広げたため、裁判部が現場検証を行うことにしたのだ。大統領選資金に対する検察の捜査が拡大されつつあることから、さらに私たちをあっと言わせるほどの場面が見られるかもしれない。

◆さて、通貨当局が10万ウォン札を造らなかったのは、賢明な選択だったと思う。もちろん、これは経済論理にはそぐわない話だ。10万ウォンの自己宛小切手の平均寿命は8日と、1万ウォン札の4年に比べ、遥かに短い。これに伴う費用の無駄遣いも少なくない。そのうえ、1人当たりの国民所得が394ドルだった時代に登場した1万ウォン札が、1万ドル時代の今なお最高額札として君臨しているということも、似つかわしくない。しかし、人目を盗んでは、薄暗い地下の駐車場で汗を流す手間さえなかったとすれば「黒いカネ」は、さらにはびこっていたにちがいない。

◆わが国の貨幣には銀行の名称、額面、発行機関、製造機関など、基本的な項目しか書かれていない。ところが、外国の貨幣にはスローガンや文句が書かれているのも珍しくない。米国のドル札には「我々は神を信じる」と書かれている。北朝鮮の1ウォン札には「世に恥じることなかれ」という文句が見られる。カネを意味する英語の「Money」の語源とされるラテン語の「Moneta」には「警告・忠告」という意味が込められているという。もしも、わが国の1万ウォン札に警告文を入れるとしたら、どういう内容が適しているだろうか。国のメンツさえなければ「守銭奴は刑務所行き」がぴったりだ。

千光巖(チョン・グァンアム)論説委員iam@donga.com