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「生活の中の真実を描く」 ベネチア映画祭で監督賞の李滄東監督

「生活の中の真実を描く」 ベネチア映画祭で監督賞の李滄東監督

Posted September. 09, 2002 23:26,   

「今夜ここが私のオアシスです。皆様からもらった生命の水を飲んでふたたび力を得て、砂漠に向かいます」。

第59回ベネチア国際映画祭で監督賞を受賞した李滄東(イ・チャンドン、48)監督。彼は授賞式で文人出身の監督らしく、修辞的な言い回しが印象的な短い感想で熱い喝采を浴びた。受賞した後も彼の態度は、いつものように落ち着いて淡々としたものだった。9日の電話インタビューで彼は、気分はどうなのかという質問に「悪くない」と答えた。

受賞を予想したのか。

「授賞式前に本賞以外の非公式賞である国際批評家協会賞、カトリック批評家賞、若い映画批評家賞を相次いで受賞し、これが果たしてよい兆しなのかどうかよく分からなかった」

オアシスがこのように高い評価を受けている理由は何だと思うのか。

「こちらの反応も韓国の反応とほぼ同じようだ。映画が始まると最初は重い空気が映画館に漂っていた。しかし、時間がたつにつれて、観客は自分の心の中の壁をのり越え、映画のメッセージを理解していくような気がした」

審査委員らは「オアシス」に対し、「中身のない映画の技巧を避けるとともに映画の本質により近づいた映画」「ラブストーリーを通じ、人間関係をより奥深く描いた映画」と評価した。

李監督はよく知られているように「デビューの遅い監督」だ。80、90年代に小説を熱心に読んだ人なら、彼の名前を「実力のある小説家」として覚えているだろう。慶尚北道(キョンサンブクト)大学の国語教育学科を卒業して国語教師を勤めていた彼は、1983年、東亜(トンア)日報の新春文芸に中編小説「戦利」で登壇した。

その後、彼は分断小説の代表作の一つとされている「ソジ」、小市民のつまらない生活の中で「希望」を見出した「ノクチョンにはクソが多い」など、社会性の濃い小説を書いて好評を得た。1993年、朴光洙(パク・グァンス)監督の映画「あの島に行きたい」のシナリオを書いたのが契機になり、本格的に朴監督の助監督として映画界に足を踏み入れた。

43歳(1997年)にデビューした彼のフィルモグラフィー(Filmography)は短い。彼が作った作品は、「オアシス」を含め、わずか3作。彼の小説は「人間を理解するためにさまざまな図式とたたかい合い、その図式を乗り越えて暮らしの真実をつかめるのに焦点を合わせてきた」と評価されたが、そのような評価はそのまま彼の映画に適用させても無理がないようだ。

デビュー作である「グリーン・フィッシュ」がバンクーバー映画祭ではグランプリを、2番目の作品である「ペパーミント・キャンディー」は東欧の権威のあるカルロブィ・ブァリで審査委員特別賞をそれぞれ受賞した。

「映画を作るたびに好評を得る理由はなんだと思うのか」と問うと、「私が巧みにごまかしたからです」と笑った。彼は冗談半分で答えたが、真の解答は彼がいつか書いた「自己紹介」から見出せる。

「映画を作るためには、それなりに暮らしについての考え方を持たなければならない。映画は本質的に私たちの暮らしと切り離しては考えられない。映画とは本物を描くものであり、その本物とは、私たちの生活に隠れている真実を見出すことである。」



康秀珍 sjkang@donga.com