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[オピニオン]北朝鮮脱出者問題、堂々とたち向かうべき

[オピニオン]北朝鮮脱出者問題、堂々とたち向かうべき

Posted July. 01, 2001 10:43,   

北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)から逃れたチャン・ギルス君一家が北京の国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)に駆け込んだ事件は、世界の関心が集中するなか、3日ぶりに「第三国への追放後韓国入り」で一段落した。北朝鮮への強制送還に至らなかったのは幸いなことだが、UNHCR代表が「一部健康上の都合で、彼らの第三国行きに反対しなかった」といった発言を吟味してみる必要がある。「本来なら第三国行きに賛成しなかった」という意味になるからだ。

実際、ギルス君一家の強制送還は、UNHCR事務所で難民地位を申請したことが全世界に公開された瞬間から、すでに不可能になっていた。中国は去年1月、UNHCRが難民として認めた7人の北朝鮮脱出者を北朝鮮に強制送還し、強い非難を浴びたことある。しかも7人のうち1人は今年4月に再び脱出し、強制送還された後、あらゆる拷問と暴力行為で体重が26キロに減り、精神障害を起こすほどだったと、全世界に向けて証言した。中国政府による国際法違反行為がもたらした惨澹たる人権蹂躙の実状を全世界に暴いたのだ。

このため、中国政府はギルス君一家を強制送還することができなくなっていた。何よりも2008年夏季オリンピック開催地に対する国際オリンピック委員会(IOC)の決定を目前に控えている時だった。また、治外法権を持つUNHCRが彼らを中国政府に渡すことも決してなかっただろう。彼らは明らかに国際難民協約が定める難民に当たるからだ。

世界の関心を集めたキルス君一家の問題を通じて、韓国政府は北朝鮮からの脱出者問題に対する制度的な改善策を模索すべきだった。現在も10万人といわれる脱北者たちは「逃げることも息をすることもできない」苦境に置かれている。ギルス君一家が自由を手にしたという安堵感の中で、ほかの脱北者たちを忘れられた存在にしてはならない。

従って、政府は「第三国追放後の韓国入り」も差し支えないというシグナルを送ることに止まらず、中国政府に対して国際難民協約を守るよう強く促すべきだった。中国政府に対し難民の可否を判断させ、難民とみなさないならその理由を明かすようにすべきだった。

ギルス君一家がUNHCR事務所に駆け込んで難民申請をしたのは、脱北者に対する難民申請手続きがないからだ。従って、この際、手続きを制度化するように呼びかけるべきだった。難民地位申請後、判定までは強制送還が禁止されるため、その費用は韓国が負担すればいい。国際法で中国政府を説得させることは不可能だと早合点するのは、自国民保護をあきらめる敗北主義的な姿勢にほかならない。

中国政府が北朝鮮の難民問題を見る態度は、韓国の関心と意志、国際社会の雰囲気によって変って来たし、これからも変わっていくはずだ。北朝鮮から逃れた難民の保護を求める請願書に1180万人が署名して国連に提出したこともあり、世界の主要マスコミは北朝鮮難民の悲劇を引き続き報じている。

巨大な独善や暴圧も、人権と良心という小さな力によって崩壊していくものだ。政府と国民はあきらめずに北朝鮮難民の地位獲得に向けて、最後まで努力しなければならない。そのためにも政府は、北朝鮮の難民問題をめぐる中国政府との交渉に堂々と立ち向かわなければならない。

キム・サンチョル(弁護士、脱北難民保護UN請願本部長)