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マスクをつけた女

Posted November. 17, 2022 08:30,   

Updated November. 17, 2022 08:30

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マスクは顔を隠したり、着飾ったりする時に使うものだ。「偽りで飾るずる賢い顔」や態度を意味する単語でもある。17世紀、イタリアの画家で詩人だったロレンツォ・リッピが描いたこの絵には、マスクを持つ女性が登場する。右手にはマスクを、左手にはザクロを持っており、作品の意味が不可解だ。一体、この女性は誰で、画家は何を表現したかったのか。

リッピはフィレンツェ出身だが、40歳で結婚した後、オーストリアのインスブルックに行き、宮廷画家となった。リッピが34歳の時に描いたこの肖像画は、フィレンツェ時代に描かれたもので、長い間「マスクを持つ女性」と呼ばれた。マスクの存在だけでも、女性はギリシャ神話に出てくるタレイアを連想させる。喜劇の女神であるタレイアは、文芸の女神ミムーサの一人で、美術作品では滑稽なマスクを手に取り、蔦の王冠をつけた姿で描かれることもある。

マスクだけ持てばタレイアの肖像と言うだろうが、女性はザクロまで持っており、図像学的解釈をさらに複雑にさせる。多くの種子から成る果物であるザクロは、キリスト教美術ではしばしば統合の象徴と考えられている。ユダヤ教では神聖さと多産を意味する。しかし、ギリシャ神話では、地下世界の神ハデスが絶世の美女であるペルセポネを妻にするために与えた実で、死と豊かさを象徴する。

「シミュラシオンの寓話」というタイトルも意味深長だ。フランス語「シミュラシオン」は、模擬実験を意味する英単語「シミュレーション」と同じ言葉で、模倣、模写という意味を持つ。それなら、絵の中の女性は特定の人物ではなく、本物を模倣した偽の寓意的な表現といえるだろう。

喜劇の女神タレイアのマスクをもつ女性は、豊かさと美しさ、統合を提示するようだが、実はそれが偽りであり嘘であるということが、画家が伝えるメッセージではないだろうか。この17世紀の画家は、目に見えるものが真実ではない可能性があることを、華やかで美しいマスクをつけた人であればあるほど警戒して疑うよう私たちに警告しているようだ。