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怖いけど勇気を出した

Posted November. 10, 2022 08:31,   

Updated November. 10, 2022 08:31

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きちんと着飾った若い軍人が、長い鉾を持って城壁の前に立っている。幼い顔とすらりとした体つきをした彼は、傲慢に見えるほど堂々とポーズを取っている。この絵は1989年、ニューヨークのクリスティーズオークションにかけられ、3250万ドルで売られ、当時、古典美術の最高値を更新した。一体誰の肖像画がこんなに高い価格で売れたのだろうか。

16世紀にフィレンツェで活動したヤコポ・ダ・ポントルモは、メディチ家の宮廷画家として働き、宗教画や貴族の肖像画を多く残した。この絵は、フィレンツェの若い軍人を描写している。彼はアイボリー色の上着に赤い帽子を着用し、赤い鎧を腰の下につけている。腰の踊りには長剣をつけ、右手には槍と斧が一緒になった鉾を持っている。

モデルの正体をめぐる意見は、大きく2つに分かれる。1989年、ポール・ゲッティ・ミュージアムがこの絵を巨額で買い入れた時は、フィレンツェの君主コジモ1世の肖像画として知られていた。1537年、コジモ1世がモンテーロの戦いで勝利した直後に描かれたと考えられていたが、この主張が正しければ、君主の年齢が18歳の時の姿だ。ルネサンス芸術の後援者のメディチ家、最高権力者の肖像、巨匠の傑作という3つの要素だけでも、最高の価値を認められるのに十分だったのだろう。

しかし、最近になって、ルネサンス時代の美術史家ジョルジョ・ヴァザーリの意見に同意する人が多い。ヴァザーリによると、この男はフィレンツェの若い貴族軍人フランチェスコ・グアルディだ。1529年の戦争でフィレンツェが完全に包囲されたとき、彼はわずか15歳だった。そんな幼い年でも国を守るために、戦線に飛び込んだのだ。

ポントルモは、貴族青年の複雑で微妙な心理を同時に見せようとしたようだ。上品で堂々としたポーズでは国を守る軍人の誇りと義務感を、生気を失った無表情な顔からは死に対する少年の恐怖を読み取ることができる。怖いが勇気を出した青年の肖像画から、切なさと崇高な美しさが同時に感じられる理由だ。