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イ・ウンファの美術の時間

Posted October. 07, 2021 07:57,   

Updated October. 07, 2021 07:57

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イメージが重要な時代だ。特に、政治家や芸能人のように大衆の関心と支持で生きる人々は、イメージ管理がより重要だ。16世紀の英国王ヘンリー8世も、「イメージの力」についてよく知っていた。彼はその時代の最高の画家に肖像画を依頼した。17世紀に消失したにもかかわらず、この肖像画は、最も有名な英国君主のイメージとして依然として頭に刻まれている。どうやってそれが可能になったのだろうか。

ハンス・ホルバインはドイツ生まれだが、英国の宮廷画家として働き、記念碑的な肖像画を多く製作した。ホワイトホール宮殿内にあったこの絵は、ヘンリー8世が息子エドワードの誕生を祝うために依頼したものと推定される。

絵の中の壮健な王は、自信満々のポーズをとったまま画面の外を凝視している。両足を広げて立ち、右手は手袋を、左手は腰につけた短剣の紐を握っている。金色のカーテンの華やかなインテリアと宝石と毛皮で飾られた衣服は、英王室の裕福さを誇示する。広い肩には厚いパッドを入れて、男性的なイメージをさらに強調した。王冠はかぶっていないが、王の権威と存在感を明確に示している。

ヘンリー8世は英史上、最も残酷で強力な君主だった。王妃を5回も入れ替えた女性遍歴のアイコンでもある。絵のモデルになった時は40代半ばで、実際は肥満に加え健康が悪化して苦しんでいた。だから画家は、王の姿ではなく、王が見せたいイメージを描いたのだ。

ヘンリー8世はこの絵に満足したのか、他の画家にまねるよう命じた。多様なバージョンを描かせ、欧州全域に広めた。貴族たちは他の画家たちに複製画を注文し、王に対する忠誠心を証明した。1698年の火災で原本が焼失しても、この肖像画がヘンリー8世の強力なイメージを代弁する象徴になったのも、他ならぬ多くの複製画のおかげだ。イメージを作ることに劣らず、伝えることも重要だということを16世紀の王はすでに知っていたのだ。