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映画の中のチャールズ皇太子役のスーツも私が仕立てました、英国仕込みの正統派テーラーのキム・ドンヒョンさん

映画の中のチャールズ皇太子役のスーツも私が仕立てました、英国仕込みの正統派テーラーのキム・ドンヒョンさん

Posted September. 07, 2021 08:44,   

Updated September. 07, 2021 08:44

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来年上映される映画「ザ・バットマン」で主人公のブルース・ウェインと悪者たちは洋服を何着か着替える。先週開幕した第78回ベネチア映画祭のコンペティション部門に招待された映画「スペンサー」でもチャールズ皇太子役を演じた俳優ジャック・ファーシングは、英国の正統派方式で制作された正装を着る。これらの映画に登場するスーツを作った人なら、決まって年配の白人の裁断師を思い浮かべやすい。しかし、これを作ったのは若い韓国人だ。英国ロンドンでテーラーとして働き、最近帰国したキム・ドンヒョンさん(32)が主人公。キムさんは「ザ・バットマン」の衣装5着と「スペンサー」の衣装3着を作った。

キムさんは5日、東亜(トンア)日報の電話インタビューに応じ、「韓国人が仕立てた英国の正統派スーツを世界の人々が見ることになるのだと思うとわくわくする。韓国人としてプライドを感じる」と話した。キムさんは、ロンドンのザヴィル・ロウ通りで今年3月までの3年間、テーラーとして働いた。ここは映画「キングスマン」に出てくる洋服店がある場所で、英国の王族など上流層が良く利用している。世界的なデザイナー、アレキサンダー・マックイーンもここでインターンとして働きながらキャリアを積んだ。キムさんは「英国紳士服の聖地」と呼ばれるサヴィル・ロウで唯一の韓国人テイラーだった。彼は、ザヴィル・ロウ・ビスポーク協会(Savile Row bespoke association)所属の洋服店で働きながら技術を学んだ。手縫いの基準を厳しく適用する英国の正統派洋服製作法をこだわる洋服店だけが協会に加入できる。

キムさんは、映画「スペンサー」でチャールズ皇太子が着るスーツ2着とコート1着を作った。これに先立ち、昨年11月には、映画製作会社から王族の品格と英国スーツの正統性がひと目で分かるスーツを2ヵ月以内に仕立ててほしいと要請した。キムさんは、「王家の服装をまともに再現するため、王族写真集など関連資料を探し、王族の服を自主制作したベテランを取材した」と説明した。

キムさんは2014年、ロンドン行きの飛行機に乗った。国内大学の衣類デザイン学科に通っていたが、婦人服中心に行われる授業や流行に敏感な韓国ファッション界に懐疑を感じたという。キムさんは「流行に流されず、時間が経つほど光を放つ服はないかと悩んだ。それがまさに英国のスーツだという結論に至った。洋服の故郷できちんと技術を学びたかった」と話した。

キムさんは2014年、ロンドン芸術大学でオーダーメイドスーツ(bespoketailoring)を専攻し、洋服技術と文化を幅広く勉強した。2017年、サヴィル・ロウ・ビスポーク協会が2年に1度、洋服を勉強する学生を対象に開催する「黄金ハサミ競技大会」で最終25人に選ばれた。卒業後3年間、ザヴィロ・ロウの洋服店で働き、今年3月に帰国した。新型コロナウイルス感染症で在宅勤務が増え、英国の洋服市場が低迷したためでもあるが、韓国で実現したいという夢があったからだ。最近自分のブランドを立ち上げた。近いうちに映画衣装からインスピレーションを受けて作った服をセレクトショップなどを通じて販売する計画だ。今年末には自分の店を開く。

キムさんは、「良い服は着るほど輝き、体によく合う服だと思う」とし、「古くなっても田舍臭くなく、さらに優雅に感じられる英国の正統派スーツ技術を適用した服を国内で披露したい」と話した。「韓国でもっと実力を積んだ後、英国に戻ってキム・ドンヒョンという韓国人が仕立てたを英国の人々に着てもらうのが最終ゴールです。誰もが自分の服1着を持つのが夢になるまで精進したいと思います」。


孫孝珠 hjson@donga.com