Go to contents

クム・ナンセが作った「青年音楽家の巣」

クム・ナンセが作った「青年音楽家の巣」

Posted July. 06, 2021 08:10,   

Updated July. 06, 2021 08:10

한국어

3日午後、釜山市水営区(プサンシ・スヨング)の鷗樂路(旧望美洞)の複合文化空間「F1963」内のクム・ナンセ・ミュージックセンター。広さ303平方メートル(約90坪)の公演場のガラス越しに、真夏の濃い雲が流れていく様子が見えた。ハルヴォルセンが編曲したヘンデルの「パッサカリア」のテーマを、若いバイオリニストのクォン・イェウンとチェリストのチェ・アヒョンが演奏すると、聞いていた指揮者のクム・ナンセ(74)が近づいた。

「このテーマの上でさまざまな変奏を繰り広げることになりますが、少し悲しい部分がありますか?」

2人の演奏者が憂鬱な楽句を演奏すると、クム・ナンセは再び話を続けた。

「2つの楽器が会話をしているようですね。『どうして死んだんだ?』 『そうだね』って言っているようですよね?」

観客たちはうなずき、演奏者たちの口元に「そうでしょう?」というような笑みが広がった。散歩していた市民たちが、ガラス越しに演奏会を見下ろす姿が見えた。

F1963は、高麗(コリョ)製鋼の旧水営工場の跡地に2016年に誕生した複合文化空間だ。書店と国際画廊の分館、現代(ヒョンデ)モータースタジオ、芸術専門図書館とカフェ、野外散策空間などがあるここに今年4月1日、クム・ナンセ・ミュージックセンターがオープンした。ミュージックホールの他、5つの練習室とゆったりした大きさのロビーを備えている。動画制作のための専門装置も設置している。

「クム・ナンセ先生は釜山で成長し、故郷の文化発展に大きな意欲を持っていたことを知っていました。企業とアーティストが互いに確認した大切な意味を込めて、この空間を作りました」。文化財団1963のウィ・ミラ理事長は、「運営の方向性は、完全にクム先生の役割だ」と話した。

今は毎月週末に4回の招待音楽会を開き、独奏から大規模の室内楽まで多様な演奏効果を試している。F1963内の200席規模の野外公演場と連携したプログラムも模索している。

クムナンセ・ミュージックセンターの大きな長所は、明瞭ながらもバランスの取れた音響だ。クム・ナンセ監督は、マイクなしで静かに話を続けたが、小さな一言も隅々まで伝わってきた。バイオリンを演奏したクォン・イェウンは、「音がよく響き、演奏者自身の音がはっきり聞こえるので、とても楽だ」と話した。

京畿道高陽市(キョンギド・コヤンシ)のアラムヌリホールや慶尚南道統営(キョンサンナムド・トンヨン)の国際音楽堂など、良い音響で有名な公演場の設計に参加してきたキム・ナムドン・サムソンエンジニアリング代表が音響コンサルタントを担当した。キム代表は、「公演場の壁面にガラスを使うのは、音響の面では最悪の選択とされるが、芸術と市民が疎通できる空間を作るという意味で『のぞき見できる音楽会場』になった」と話した。ガラスの壁と直角をなす短いガラス面が音響の問題を解決した。下部の壁には、角度を変えるバナーを配置し、残響を1.3~1.7秒に調節できる。

クム・ナンセ監督は、「自分の名前でできた空間だが、青年演奏家たちの成長のための巣として作っていきたい。練習から演奏までしていく多彩なプログラムを開発し、釜山音楽界の発展を成し遂げることを願っている」と話した。氏は、「企業の発展を成し遂げた土地を文化発展のために寄付したという意思は尊いと思う。韓国文化界のよいモデルになればと思う」と語った。


釜山=ユ・ユンジョン記者 gustav@donga.com