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喪失の恐れと苦痛

Posted July. 01, 2021 08:22,   

Updated July. 01, 2021 08:22

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死が恐ろしい理由は、死後の世界がわからないためだろう。スイスの象徴主義の画家、アルノルト・ベックリンは死後の世界の姿をサイプレスがある岩島の姿で表現した。同じ題名、同じ構図の絵をなんと5点も描いた。経験することができない死後の世界を画家はどうやって描くことができたのか。なぜそのように死という主題に執着したのか。

バーゼルで生まれたベックリンは、ドイツで学んだ後、ドイツとイタリア、スイスを行き交って作業した。1876年から9年間、フィレンツェで活動したが、「死の島」はこの頃に描かれた。 1880年、53歳の時、後援者のために最初のバージョンを完成したが、どうしたわけか画家自身が絵を所蔵した。夫を失ったマリー・ベルナという女性がこの絵を見て大いに感動し、2つ目のバージョンを注文した。ベックリンはその要請で、島へ向かう船の上の女性と棺を加えた。死の暗示と共に哀悼の意味だった。最も有名なのは、3年後に描かれた3つ目のバージョンで、岩山の描写が最も繊細だ。一時期、独裁者ヒットラーが所蔵した。夢幻的な死の島は、実際に存在する風景ではなく、フィレンツェのイギリス人墓地とモンテネグロにある神秘な岩島を組み合わせて画家が想像したイメージだ。

 

ベックリンが死という主題に執着したのは、生きて死をあまりにも頻繁に経験したためだった。 結婚後14人の子どもを得たが、5人は幼くして死亡し、3人も父親よりも先に死の川を渡った。作品にインスピレーションを与えたイギリス人墓地も、新生児の時に死んだ娘マリアが埋葬されたところだ。死が恐ろしい本当の理由は、残された人々の喪失感と苦痛があまりにも大きいためかもしれない。死の恐怖から抜け出したかったのか、ベックリンは1888年、死の島の代わりに突然「生の島」を描き始めた。生の喜びと幸福を描いたベックリンの新作は、画家自身のように残された者に対する慰めではないだろうか。