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「元請業者が下請労働者と団体協約」、産業界の混乱が懸念される

「元請業者が下請労働者と団体協約」、産業界の混乱が懸念される

Posted June. 04, 2021 08:13,   

Updated June. 04, 2021 08:13

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元請け業者は、下請業者の労働組合の団体交渉要求に直接応じなければならないという中央労働委員会(中労委)の判断が出た。中労委は2日、全国宅配労働組合がCJ大韓(テハン)通運を相手取って起こした「団体交渉拒否不当労働行為の救済申請」について、労組の肩を持った。CJ大韓通運は、個別代理店(下請け会社)と契約を結んでいるが、代理店と契約した宅配運転手らがCJ大韓通運に労働条件の改善などを要求できるという意味だ。契約関係のない元請けとも団体交渉ができるようになれば、宅配業界のみならず、産業全般にわたって混乱は避けられない見通しだ。

今回の判定は、1審に当たるソウル地方労働委員会の決定を覆したものだ。ソウル地能委は昨年11月、CJ大韓通運が宅配運転手の使用者ではないという理由で労組申請を却下した。当時、「団体交渉の当事者と使用者の概念を、契約関係がない第三者に拡張できない」という大法院の判例が引用された。しかし、中労委は、CJ側は宅配便運転手と契約関係はないが、労働環境に直接影響を及ぼすため、団体交渉をしなければならないと判断した。

問題は、下請労働者の労働環境にどれほど影響を及ぼしてこそ元請に交渉責任があるのか曖昧だということだ。中労委は、「構造的な支配力または影響力」を掲げているが、これもまた明確ではない。このため、クイックサービスの運転手や訪問販売員のように、宅配運転手と似たケースはもとより、造船や自動車など、さまざまな分野で、元請相手への交渉要求が急増する可能性が高まっている。

今回の判定は、重大災害処罰法の適用にも影響を及ぼすものと見られる。同法は、下請労働者の重大災害時に、元請に「実質的な運営等の責任」があるなら処罰することを定めている。今回の中労委の論理によると、元請経営陣は処罰を避けられない。このようなやり方では、下請業者は事業主としての役割を失ったまま、人材代行業者へと転落しかねないという懸念も出ている。

下請構造は、企業間の自主的契約の結果だ。企業規模が大きいからといって、適法な契約関係を崩して、元請業者に過度な責任を負わせることは正しくない。しかも元請企業の「影響力」というあいまいで包括的な根拠で団体交渉の相手を決めれば、産業界の混乱とともに労使対立を招くだけだ。CJ側は法廷訴訟を予告したが、どのような判決であれ明確な要件が提示されなければならない。