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米国の韓国系作家ステフ・チャ氏「人種嫌悪を防ぐには、互いの文化を地道に教えるべき」

米国の韓国系作家ステフ・チャ氏「人種嫌悪を防ぐには、互いの文化を地道に教えるべき」

Posted May. 12, 2021 07:57,   

Updated May. 12, 2021 07:57

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1991年3月16日、米ロサンゼルスのスーパーマーケット。オレンジジュースを買うために入ってきた15歳の黒人少女が、ジュースの瓶を取ってリュックサックの中に入れた。少女が手にした紙幣に気付かなかった50代の韓国人商店の女店主は、レジに近づいてくる少女を泥棒と間違えて胸ぐらを捕まえた。少女はこれに対抗して、店主の顔を殴り倒した。少女がレジにジュース瓶を置いたまま店を出ようとした瞬間、店主は拳銃を手に取った。少女は後頭部に撃たれて即死した。

この事件はたちまち黒人の怒りに火をつけた。当時は、白人警察4人が交通取り締まり中に黒人青年ロドニー・キングを無慈悲に暴行した「ロドニー・キング事件」の直後だった。この二つの事件は、米国内の黒人が韓国人の店に火をつけ、アジア系人種に無差別暴行を加えた「ロス暴動」につながった。

ロス暴動の発端となった事件をモチーフにした小説が最近、「黄金の枝」から出版された。韓国系米国人作家ステフ・チャ(35)は、長編小説「おまえの家が代償を払う、日本語題『復讐の家』」の中で、人種犯罪に絡んだ加害者と被害者家族の物語を繊細に描写した。11日、著者との書面インタビューで、ステフ・チャは、「白人の人種嫌悪に関する本はすでにとても多い。私は有色人コミュニティ間の対立を見たかった」と明らかにした。

新刊は、28年前に起きた仮想の人種犯罪事件を取り上げている。事件の具体的な状況は、ロス暴動の引き金となった事件と同じだ。人種犯罪加害者の娘である韓国系米国人グレイス・パクと、被害者の弟である黒人男性のショーン・マシューが語り手として交互に登場し、それぞれの家族にスポットライトを当てる。小説は、加害者とその家族の経験は互いに異なり、被害者の死亡で家族が経験する苦痛は終わらないということを見せてくれる。

氏は、「罪悪感と羞恥心を受け継いだ加害者家族と、怒りを受け継いだ被害者家族にスポットライトを当てたかった」と明らかにした。彼がグレイスとショーンを語り手にしたのもこのためだ。氏は「グレイスとショーンには罪がほとんどないが、彼らにとって家族はあまりにも重要なので、家族が体験した人種嫌悪犯罪の影響を避けることはできない。少数人種が羞恥心や怒り、罪悪感を経験する過程に集中しようとした」と語った。

長い間、韓国人と黒人間の対立の歴史が続いたロスで育った著者にとって、人種嫌悪は「白人対有色人種」の単純な対立構図では説明できなかった。著者は、人種対立と嫌悪は非常に多層的で、どの人種もこの問題から自由ではないという点を強調している。彼女は、「有色人種間の嫌悪犯罪は、非常に私的な空間で行われている。それぞれの文化と偏見が異なり、対立が非常に多様な様子を呈している」と説明した。

米国内の人種対立解消を巡る彼女の展望は明るくない。氏は「公式的な人種差別発言が社会的に容認される雰囲気を作ったドナルド・トランプ元大統領によって、人種嫌悪はさらに深刻になった。政府が変わり、こうした雰囲気が静まるかもしれないが、時間と努力が必要になる」と予想した。

人種嫌悪犯罪をどうすれば防げるだろうか。遅くても、多様な人種の文化と歴史を持続的に教えるべきだというのが著者の見解だ。「罪のないアジア人たちが街で攻撃されるのを見守るのはつらい。人種間の力学関係を理解するため、できることを続けていかなければならない」


チョン・チェウン記者 chan2@donga.com