Go to contents

憲法上の防衛権を侵害する携帯電話パスワード強制解除法を推進

憲法上の防衛権を侵害する携帯電話パスワード強制解除法を推進

Posted November. 14, 2020 08:46,   

Updated November. 14, 2020 08:46

한국어

秋美愛(チュ・ミエ)法務部長官が12日、被疑者が携帯電話のパスワードを悪意的に隠したり捜査を妨害したりする場合、裁判所の命令など一定の条件の下、その履行を強制し、不履行時には制裁する法の制定を検討するよう指示した。パスワードの解除を法で強制するという発想だ。

秋氏の指示は、法治の責任を負う主務長官の口から出た言葉なのか耳を疑わせる。いくら犯罪が疑われる被疑者であっても、防衛権を行使することは憲法に明示された国民の基本権だ。憲法第12条第2項は、「すべての国民は拷問を受けず、刑事上自分に不利な陳述を強要されない」と規定している。捜査機関に出頭して黙秘権を行使し、証拠を隠滅しても自分に関連した行為は処罰を受けないのは、このような憲法上の権利を保障するためだ。個人の秘密情報が入っている携帯電話のパスワードを出せと強要することは、憲法の精神に真っ向から反する超法規的行為だ。

携帯電話のパスワードは、プライバシー保護のために個々人の頭の中に記憶するものであるにもかかわらず、これを言えと強制することは、憲法上の良心の自由も侵害するという指摘が多い。被疑者が携帯電話のパスワードの提供に協力しない場合、捜査機関が解除に何か月もかけるのも、携帯電話パスワードを不可侵の私的領域と認めるためだ。携帯電話の中にある証拠を確保することは捜査機関の役割であって、当事者が協力しなければならない義務ではないというのが法曹界の大方の意見だ。秋氏が、外国の法例として取り上げた英国の「捜査権限規制法」は、テロ防止など国家安保に限定されたもので、一般刑事事件を念頭に置いた秋氏の発想とは制定目的が根本的に異なる。英法案の携帯電話パスワード強制解除条項は、テロリストを対象にしているにもかかわらず、発効が7年間も留保されるほど人権侵害の論議が激しかった。

 

民主化以降、家宅捜索などの強制捜査はプライバシー侵害を防ぐためにその範囲をできるだけ制限してきた。法務長官が人権を擁護するどころか、人権侵害の素地が多い危険千万な「ビック・ブラザー法」の制定を推進することは国民を不安にさせる。民主弁護士会や参与連帯まで秋氏を強く批判したほどだ。突拍子もない発言や息子をめぐる疑惑、検察掌握の試みなど、これまで露呈された欠陥に加え、法務長官に求められる人権と憲法に対する基本的な意識、素養すら備えていないのでないか懸念される。