Go to contents

「エミリー」の周辺にイスラム教徒はない

「エミリー」の周辺にイスラム教徒はない

Posted November. 13, 2020 08:34,   

Updated November. 13, 2020 08:34

한국어

先月公開されたネットフリックスのドラマ「エミリー、パリへ行く(Emily in Paris)」が話題となっている。フランスと韓国はもちろん、世界の多くの国々で再生順位の上位圏に入っている。米シカゴに住んでいた20代の女性・エミリーが、フランスのパリに来て体験する文化の違いと恋を扱ったロマンチックコメディだ。人気が高く、フランスの観光庁がドラマの中の場所のPRに出たほど。

ところが、興行と同じくらい叱咤も多く受けている。ル・パリジャン、BBCなどは、「ドラマの中のパリは愛とロマンだけがあふれており、フランス人は皆傲慢だか、優雅だ。決まりきったクリシェ(芸術作品でよく使われる素材)が飛び交う」と批判した。ドラマを見たフランスの知人たちも、「ここまで来ればSF」と皮肉った。

「なぜドラマの中のパリでは、白人だけが住んでいるのか」という話も、現地でよく出ている。主人公・エミリーの数多い周辺人物のうち、非白人系は会社の同僚(黒人)と友人(中国人)の2人だけだ。ストリート、公園、レストランなどの背景も、そのほとんどが白人だけが見える。特にフランスで生まれたイスラム教徒の移民第2、第3世代は、「パリに住んでいる多くのイスラム教徒を、『ホワイトウォッシュ(白人化)』した」「欧米偏向、差別された見方がそのまま盛り込まれている」と不快感を示している。2019年基準のフランス人口(6700万人)の9%がイスラム教徒だ。パリ市内を歩くと、非白人系がより多く見える時が少なくない。

「ドラマを巡って、開き直る必要があるのか」と反問することもできる。しかし、現在、フランス、さらに欧州の状況は、このような指摘が出るほど社会的緊張感が高まっている。1ヶ月の間に、フランスの教師殺害テロ、ニース大聖堂テロ、オーストリア・ウィーンテロが相次いで起きた。テロリストがイスラム教徒の青年と確認されたことで、イスラムへの拒否感が高っている。

フランス人のイスラム教徒・メフドゥ氏は記者に対して、「イスラム教徒は皆テロリストではないのに、地下鉄に乗れば警戒する気配だ」と話した。一方、白人系・ジュリアさんは、「イスラム教徒は皆テロリストではないが、テロリストは主にイスラム教徒だ」と主張した。

欧州連合(EU)は13日、加盟国間の移動の自由を保障したシェンゲン協定を改正して、国境管理を強化し、欧州社会との統合を拒否する移民者を制裁することにした。イスラム圏の国では、露骨的な反フランス・欧州運動が行われている。国際政治の専門家たちは、「中世から続くクリスチャン文明圏とイスラム文明圏の紛争をもとにした『文明の衝突』であるため、これと言った解決策がない」という言葉だけを繰り返している。

幸いなことに、「極端的なことだけは避けよう」という社会的コンセンサスが最近広がっている。テロ反対デモの現場で会った40代のミシェル氏は、「対立はイスラム国(IS)のようなテロ組織の肥えとなる。怒りを止めよう」と叫んだ。大学生のジャン・ピエール氏は、「大げさな社会統合政策ではなく、仕事の後にドラマ一本見るように、少し軽い気持ちで相手の立場で一度だけ考えてみてもテロは減るだろう」と話した。

その意味からか、「エミリー、パリへ行く」シーズン2では、現実の中のパリのように、様々な人種が登場することを希望するというパリ市民のソーシャルメディアのメッセージが、最近よく見られる。小さな変化が大きな変革へとつながる近道になることを願う。


金潤鍾 zozo@donga.com