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不純な自画像

Posted October. 08, 2020 08:04,   

Updated October. 08, 2020 08:04

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インゲン豆のような形の頭をした男がベッドに横になってタバコを吸っている。布団をかぶった胸の上にフライドポテトがぎっしり盛られた皿が載っている。その背景には、一杯積み重なった靴と共に、筆箱と灯りの消えた電球が見える。漫画のワンシーンのようなこの絵は、米抽象表現主義の巨匠・フィリップ・ガストンが60歳の時に描いた自画像だ。抽象画家だった彼は、なぜ突然このように滑稽で奇妙な自画像を描いたのだろうか?

1913年、ウクライナ系ユダヤ人移民者の息子として生まれたガストンは、ロサンゼルスで成長した。幼い頃目撃した父の自殺と白人至上主義集団「KKK」の活動は、後日、彼の作品と人生に大きな影響を与えた。青年時代は人種差別、暴力、ファシズムに反対するテーマの大型壁画で注目を集め、1950年代はジャクソン・ポロックと共に、抽象表現主義の旗手となった。抽象画で最高の名声を享受したガストンは1968年、突然具象画に転換した。電球、靴、タバコ、頭巾をかぶったKKK団員など、謎のようなイメージで満たされた漫画のような絵に加え、色彩も制限されており、奇怪で幼稚に見えた。

1970年に新作が公開されると、「これは芸術ではない」という嘲笑と酷評があふれた。人々は彼が正気ではないとささやいた。美術界から隔離されたガストンは、孤独をタバコで癒し、喪失感を食べ物で満たした。この絵を描く頃から、過食と一日にタバコ3箱を吸う習慣が始まった。大きな一つ目、失われた鼻と詰まった耳、ホロコーストを象徴する靴の山、桶に逆さに詰め込まれた筆などが描かれたこの自画像は、彼の不安心理と悲劇的状況、無気力な体の状態をそのまま示している。

実は、彼が抽象化を諦めたのには理由があった。当時、米国ではベトナム戦への反対デモと一緒に68革命の嵐が吹いた。体は老衰したが、彼の心はまだ熱かった。絵は不純なものだと信じていた彼は、純粋さを打ち出した抽象の代わりに・叙事と風刺が可能な具象画を通じて、当時の米社会とその構成員である自分を批判しようとしたのだ。