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読書を勧める社会

Posted September. 10, 2020 07:51,   

Updated September. 10, 2020 07:51

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黄色いドレスを着た少女がソファに座って本を読んでいる。フワフワした大きなクッションに背中からもたれかかり、左腕は木のひじ掛けにのせた。きちんと結い上げた髪は紫色のリボンで結ばれ、視線は右手に握った本に完全に固定されている。少女はいったい誰なのか。何の本をそんなに熱中して読んでいるのか。

「読書する娘」は18世紀のフランスの画家、ジャン・オノレ・フラゴナールの代表作の1つ。この絵が描かれた当時、フランスは貴族の享楽と贅沢が最高潮に達し、知性と教養ある生活が強調された時代だった。フラゴナールは、世俗的で官能美あふれる絵で貴族の寵愛を受けた画家だったが、この絵だけは読書という主題を通じて、道徳的メッセージを与えようとしたようだ。華やかな少女の衣装に比べて、周辺の背景が非常に質素に描かれた理由でもある。少女が読んでいる小さな本は、当時エリートの間で流行したヴォルテールの「カンディード」のような社会風刺小説のようだ。

少女の正体がわかったのは比較的最近だ。この絵は、フラゴナールが37歳の時に描いた18点の「幻想的な肖像画」の連作に属するが、2012年に連作を練習したドローイングが発見された。1枚の紙に18人の肖像が親指の爪ほど小さく描かれたドローイングだった。絵にはクリスチャンの女性、歌手、作家、楽器演奏者、俳優、将軍、貴婦人など様々な職業群が登場するが、そのうち読書する少女が最初に出てくる。注目する点は、この少女を除いて他の人物の下には注文者の名前が記されていることだ。そのため、実際のモデルが存在する他の絵とは違って、この少女だけが画家の想像から生まれた本物の「幻想的な人物」なのだ。

現実ではありえない超自然的で非現実的なことを指して「ファンタジー」という言葉を使う。上流階級の贅沢と放蕩が最高潮に達した時代に、読書する知性人はそれこそファンタジー人物のように考えられたのだ。本を読まない社会は死んだ社会だ。250年が経った今でも読書を勧める理由ではないだろうか。