Go to contents

無謀と勇気

Posted September. 03, 2020 07:41,   

Updated September. 03, 2020 07:41

한국어

17世紀のベルギーの宮廷画家、ピーテル・パウル・ルーベンスは、宗教画や人物画も優れたが、特に神話の世界の表現が卓越した。古典文学と芸術に対する博学な知識を基に、どんな複雑な主題も目の前に生き生きと描き出し、賛辞を受けた。

ルーベンスが晩年に描いた絵も、ヴィーナスとアドニスの神話を扱っている。古代ローマ詩人のオウィディウスの『変身物語』に由来し、ティツィアーノの絵を参照にして描かれた。キューピットの矢に傷つけられたヴィーナスは、ハンサムな猟師アドニスを見るやいなや恋に落ちた。愛する男性と一緒にいるために興味のなかった狩猟を趣味にした。ある日、一緒に行くことができないと、ヴィーナスはアドニスに危険を警告し、絶対に狩猟に行かないように言う。

ルーベンスはこの場面を巨大な絵画にした。赤い服を着たアドニスは槍を持って狩猟に行こうとし、裸のヴィーナスは両手でアドニスの腕をつかんで哀願している。キューピットまでアドニスの片足をつかんで止めている。

ルーベンスは美の女神ヴィーナスを白く太った女性に、美青年のアドニスを褐色の肌の巨大な筋肉質の男性に描いた。今見ると過剰に見えるが、実際より肥大で強烈なイメージがまさにルーベンスが願った理想的な人体の姿だった。華やかな色感と自由奔放なタッチ、ボリューム感あふれる人体描写と演劇的な場面構成は、ルーベンス美術の特徴を全て見せてくれる。

アドニスはヴィーナスの言うことを聞いたのだろうか。そんなはずはないだろう。男らしさを誇示して狩猟に行き、猪に殺されてしまう。愛する恋人も、キューピットも止めたが、無謀な自信のために悲惨な最期を迎えた。無謀と勇気は違う。皆が危険を警告する時は、従ってこそ災いを逃れることができる。17世紀の絵が今日を生きる私たちに伝えるメッセージではないだろうか。