Go to contents

女性の痛みを描いた画家

Posted July. 30, 2020 08:06,   

Updated July. 30, 2020 08:06

한국어

髪に櫛を入れることは、非常に私的な領域の日常と言える。髪をとかしてあげることも、親密な関係においてのみ可能である。バレリーナの絵で有名なエドガー・ドガは、髪を梳く女性もしばしば描いた。そのテーマを最も大胆に扱ったのが、まさにこの絵である。ところが、絵の中の女性の姿は、なんだか不快そうに苦しんでいるように見える。画家はなぜ、このような姿を描いたのだろうか?

全体的に赤く処理された絵画の中の背景は、19世紀のパリのとある家庭の室内だ。ピンクのブラウスを着たメイドが、女主人の長い髪をとかしている。妊婦とみられる主人は、力まかせに髪をとかされて、体が後ろにのけぞって痛そうにしながら右手で自分の頭皮を押さえている。「痛い、痛い。もっと優しく梳かしてよ!」と言っているようだ。一度も髪を長くのばしたことのない人は、絶対に分からない状況であり、苦痛である。

ドガは、女性たちがどうやって髪を梳かすのか、なかなか梳かせない時はどうやって梳かすのかについてよく知っていた。生涯独身だったが、モデルたちを通じて女性の私的で秘密の部分を注意深く観察することができた。その感じを知るために、モデルの髪を何時間も梳かしたりした。「あの人は変な人です。モデルとして立つ四時間の間、ずった私の髪だけをブラッシングしたんですから」。ドガのモデルが言った言葉だ。当時、他の男性画家たちとは違って、ドガはヌード画を描くときも、モデルと「何事」もなかった。ただ、絵に集中した。これは逆説的にも、彼は女性がすごく嫌いだったからだった。さらに女性のモデルたちが痛みと戦うことを見ることを楽しんだ。だから彼の絵の中には官能あふれる魅力的な女性ではなく、疲れや苦しむ日常の中の女性が多い。

この絵も、長い髪の妊婦の日常の中の不便や痛みを含んでいる。メイドの頭と腕から、主人の体に沿って続く対角線は、その痛みの流れを示す。痛みに色があるのなら、それは間違いなく血のように赤いはず。絵全体が赤い理由だ。最後まで未完成として残ったこの絵は、ドガの死後、アンリ・マティスが購入した。