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戦争のリアリズム

Posted June. 25, 2020 08:17,   

Updated June. 25, 2020 08:17

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ナチス時代のドイツでは祖国愛を高揚したり、戦争を美化した芸術は奨励されたが、逆に戦争の悲惨さを表現したり、社会批判的な芸術は「退廃芸術」と規定されて激しい弾圧を受けた。ナチス政権は退廃美術を浄化するという名分の下、ドイツ全域の美術館から押収した1万7000点の美術品を公に焼却したり、売却した。そこには、ドイツ・リアリズム画家・オットー・ディクスの作品260点も含まれていた。

この絵は、ディクスが直接参戦した第1次世界大戦の悲劇的光景を描写している。兵士たちの死体は泥で覆われており、砲撃で破壊された塹壕は、雨水により大きな水たまりとなっていた。画面右側の兵士はまだ生きているのか、寒さと恐怖に震えながら、画面の外の観客を見つめている。もしかしたら、目を開けたまま死んでいるのかもしれない。真ん中にそびえた木の柱に張り巡らされた鉄条網は、血の付いたイエスのいばらの冠に似ている。絶望しか残っていないこの悲惨な戦場は、フランドル(ベルギー北部)の激しかった西部戦線だ。第一次世界大戦は、毒ガス、戦車、航空機、機関銃などの大量破壊兵器が初めて使用された総力戦だった。7000万人以上の兵士が参戦し、このうち約1000万人がこのような新型兵器によって悽惨な犠牲となった。

退廃美術家の烙印が押されたディクスは、ドレスデン美術大学教授職から解任された後、ドイツ南西部の農村に隠居していた時期にこの絵を描いた。大戦勃発後、約20年が経った時点だった。ディクスが戦争中に書いた日記にはこう書かれている。「ノミ、ねずみ、有刺鉄線、榴弾、爆弾、穴、死体、血、飽和、酒、猫、毒ガス、加農砲、糞、砲弾、迫撃砲、射撃、ナイフ。これが戦争だ!すべてが悪魔のものだ!」。彼の表現どおり、戦争は汚く、鳥肌が立ち、悲惨で悪魔のようなものだ。決して英雄的だか、ロマンチックなものではない。とある評論家の言葉のように、「鳥肌が立つように恐ろしい人間の物忘れを破るために」、ディクスは反戦画家となり、この残酷な流血惨事のシーンを描き、また描いた。

美術評論家