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「海の羽ばたき」が災害を招いた

Posted May. 23, 2020 08:28,   

Updated May. 23, 2020 08:28

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「北京の蝶の羽ばたきが、翌月米ニューヨークに嵐を発生させる」という言葉がある。何の関係もないように見える小さな蝶の羽ばたきの影響がますます大きくなって、結局、地球の反対側に嵐をもたらす原因になりかねないという「蝶の理論」だ。あまり関係がないように見える現象が、昨年末から今年春までに全世界に災害をもたらした。ほかならぬ「海の羽ばたき」と呼ばれる海水の異常高温現象だ。

インド洋東側の海面は涼しく、西側の海面は暖かい現象を「ダイポール(dipole)」と呼ぶ。通常ダイポール現象は16年に一度現れるが、昨年末にインド洋の東側と西側の海水温度の差が2度ほどと深刻に広がった。

インド洋でダイポールが発生すれば、インド洋東側の海上と東アフリカと中東南側のオマーン、イエメン地域は低圧部となる。すると、ここには多くの雨が降る。干ばつで苦しんでいたソマリアとエチオピアに多くの雨が降って洪水が発生し、数十万人の被災者が発生した。また、多くの雨が降ったことで、砂漠バッタが巨大な繁殖を開始した。南側のイエメンとオマーンで繁殖した大規模なバッタ群れが、東アフリカとパキスタン、インドまで移動しながら膨大な被害を与えた。インドの場合、農耕地555万ヘクタールが廃墟に化して約1700億ウォンの経済的損失を被り、ケニアは105万ヘクタールの農地が荒地に変わった。

インド洋ダイポールは、高い海水温度で欧州の高温現象を招き、この高温は偏西風に乗って中国と韓国に流入した。昨年12月から今年2月まで、韓国の冬が異例に暖かかった理由だ。また、インド洋のダイポールは、インドモンスーンを活性化させて、パキスタンとインド北部、ヒマラヤ地域で多くの雨と雪を降らした。この地域は、冬は雨や雪が降らない。しかし、今年は平年より2倍から80倍まで多くの雪や雨が降った。今年初め、ネパール・アンナプルナで登頂していた韓国人教師4人が雪崩によって行方不明になった悲劇が起きた。教師らは雪崩が最も少ない季節を選んだが、インド洋ダイポールで作られた多くの雪で地滑りが発生して、惨事に見舞われたのだった。

インド洋のダイポールは、豪州の大型山火事に油を注いだ。ダイポールは、インド洋東部では低圧部を作るが、その南にある豪州地域では高圧部を作る。豪州に高圧部が作られたことで、猛暑と干ばつに見舞われた。キャンベラなどが49度まで上がる猛暑の中、2019年9月に始まった豪州の山火事は、今年初めまで続いた。山火事の被害が最も大きいニューサウスウェールズ州だけで、約400万ヘクタールに達する緑地が灰となり、ワラビーなどの野生動物10億頭以上が犠牲になった。

海面温度上昇という海の小さな羽ばたきによって気象災害が発生するのを目にしながら、海洋の強力なエルニーニョが発生すれば、どれだけ大きな災害が発生するか怖くなる。もう海水温度は過去より上昇して、以前のレベルのエルニーニョではないからだ。