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ジェニーの屋根裏部屋

Posted May. 13, 2020 07:30,   

Updated May. 13, 2020 07:30

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イマヌエル・カントは嘘をつくことはすべて罪だと言った。人間愛から出た嘘まで罪だと言った。他人や自分が莫大な代価を払っても、「殺人者に対しても嘘をついてはいけない」と言った。そうなのか。

1980年5月の光州(クァンジュ)を扱ったジェニファー・ハントリーの『ジェニーの屋根裏部屋』は、カントとは違った話をする。現場で撮った写真を海外に送って、光州の真実を世界に知らしめた米国人宣教師チャールズ・ベッツ・ハントリー(韓国名ホ・チョルソン)牧師、彼の娘がこの小説の原作者だ。

光州楊林洞(ヤンリムドン)で生まれたジェニーは1980年当時、満10歳の少女だった。5月20日深夜、韓国人牧師たちがジェニーの家にやって来た。軍人が家まで捜索して学生たちを連行するので、彼らは不安になって子どもをかくまってほしいと来たのだった。軍人が来れば、嘘をついてほしいと言った。ジェニーの両親は、自分の家族まで危険になるかもしれなかったが、学生たちを屋根裏部屋にかくまった。そして養子にした韓国人の息子を含む子どもたちに、誰にも、他の宣教師や米国人にも言わないように言った。必要なら嘘をつけと言ったも同然だった。彼らにとって人間愛から出た嘘は罪ではなかった。彼らは韓国人をもっと受け入れて屋根裏部屋に住まわせた。後には、弾丸が壁を突き抜けるのが怖くて、家族を含む皆が窓もない地下室で寝た。彼らは客を守ろうと命をかけた。旧約聖書に出てくるロトのように。

『ジェニーの屋根裏部屋』は、本の後半に収録されているジェニファー・ハントリーの英語の原文『5月10日』をイ・ファヨン作家がフィクションを加味して再構成した小説だ。作家が2人ということだ。そのおかげで私たちは事実とフィクションが混ざったすばらしい子ども用5・18小説を手にすることができた。この小説は、実存的な状況で人間がどれほど倫理的であり得るかを示す。人間のためのことなのに、嘘ならどうなのか。ジェニーの家の屋根裏部屋と地下室は、絶対的な真実の原則を守ったカントと同じだったなら決して可能でなかった倫理的な空間だった。

文学評論家・全北大教授


キム・ソンギョン記者 tjdrud0306@donga.com