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猫を選んだ人

Posted February. 12, 2020 08:28,   

Updated February. 12, 2020 08:28

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大事にしていた猫が消えたからといって結婚を取り消すことができるだろうか。趙南柱(チョ・ナムジュ)作家の短編小説「テラスのある家」では、そのようなことが起きる。

二人は結婚しようと、招待状まで作った。猫を飼う女性は、男にテラスのある家を新居として契約しようと提案する。雨が窓にコロコロ転がる様子を眺めるのが好きな猫に、雨を実際に見せながら暮らしたいという気持ちからだ。ところが、結婚式の招待状の封筒に住所を付ける作業をする際に、事故が起きる。男が思わず開いたドアから、猫が出ていったのだ。

女性は自分でも気付かないうちに100番を押す。非現実的な行動であるが、それほど切迫した気持ちからだ。二人はチラシを貼り付けて、猫を探そうとするが何の役にも立たない。女性は地獄というものがあるなら、「飼っていた猫が消えたここ」が地獄だろうと思う。男は各自が送ることにしていた結婚式の招待状を、女性のものまで代わりに郵便で送る。女性は、後でそれを知って感謝のことばを言うが、感謝の気持ちはない。むしろその思いやりが気になる。猫が消えた後、自分が何をしたのか覚えていないほどのトラウマ状態だった女性には、そのような配慮をしないことが、かえって本当の配慮だったのかもしれない。男性と違って女性には、猫はペットというより家族である。その家族が消えたのだ。だから結婚は後の問題だ。結局、女性は借家もキャンセルし、結婚もなかったことにする。一ヶ月後、猫を見つけるが、男性との関係は過去のものとなった。

猫を無くしたからとって、結婚まで破棄するなんて、常識の目から見れば、とうてい理解できないことだ。しかし、猫を失って、生活を地獄にまで考える状況であれば、そのトラウマが何とか癒されるようにすることが、優先だったのかもしれない。これは善悪の問題ではない。小説は、人間だけではなく、時には他の種との関係、また、そこから生じる傷も無視すべきではないことを、ストーリーに投射した感情の力で説得する。