彼が外国語高校を選ばず、特性化高校を選んだ理由は、IT部門は韓国経済を率いる産業分野であり、未来世代のための雇用創出の中心だと硬く信じたためだ。彼は、「最近、製造業は10億ウォンを投資すれば、3人が食べていけるが、ITは、同規模の投資で20人が食べていける」とし、「アップルの最高経営者だったスティーブ・ジョブズやフェイスブックの創業者・マーク・ジャッカーバーグが20歳ごろ、起業して数十万人を食べさせているように、わが子らにもこのような道を切り開いてあげたかった」と主張した。
キム理事長がディミゴを買収した後、平凡だった学校施設は、米国の高級「ボーディングスクール」のように様変わりした。氏はまず、最先端のIT装備を備えた情報技術文化センターや屋内外多目的体育館、全校生徒を収容する寮を建設した。まもなく、野球場やプールも建設する計画だ。また、生徒らが先端技術を経験できるよう、学校内の全てのIT装備は、最新製品が出るたびに、アップグレードさせている。学校発展基金だけでも60億ウォンを超えている。
このように、校舎などの「ハードウェア」は、彼の意志で変えることができたが、学校を締め付けているさまざまな規制はそうではなかった。カリキュラムや教師らは軒並み、古い規制に捕らわれていた。
最初、学校に来たとき、キム理事長はカリキュラムで最も大きな衝撃を受けた。生徒らは、1980年代のプログラムである「ターボC」を学んでいた。氏は、「直ちにターボC++に取り替えるよう」指示すると、教師らは、「教科書がない」、「カリキュラムは1年前に当局から承認を受けなければならない」と主張した。
優れた教師を多く選抜することも容易ではなかった。「小中等教育法施行令」は、クラス数に基づいて教師数を制限しており、各市道教育庁は、教員配置の基準を定めている。高校は通常、3クラスまではクラス当たりの教師が3人、1クラス増えるたびに、教師を2人ずつ増やすことができる。行政職員もクラス数の3分の1まで使うことができる。
特性化高校は、現職の該当分野の専門家による指導が切に求められているのに、「産学兼任教師」の数も、制限(教師枠の3分の1以下)となっていた。それさえも、従来の教師の枠に追加するのではなく、既存の教師を取り替える方式でのみ使うことができた。
教師らのレベルも満足できなかった。キム理事長は、特段の対策を打ち出した。教師採用の際は、志願した科目の大学修学能力試験(修能)を受けさせたのだ。氏は、「一昨年の志願者120人中8人が、100点満点中、0点、9人は5点だった。数学志願者は、50点を越える人が30%足らずだった」と打ち明けた。
しかし、学校は企業のように「インセンティブ」を動員して優秀人材を迎え入れる道もない。時間外手当は、1時間当たり3万5000〜4万ウォンと縛られており、「教員インセンティブ」も、政府が定めているからだ。苦肉の策として、キム理事長は、法人会計をかけて、教師らにインセンティブを与えている。教員評価で上位の10人には、200万ウォンずつのインセンティブを払い、普段から一所懸命に教育を行っている先生は、毎年5〜10人を選抜し、米教育博覧会に送っている。
教職員らも同様に、キム理事長の努力に積極的に反応している。教師の資格証を持っている8人の教職員が寮の生活管理を専従し、教科を担当している教師らは、放課後、生徒を相手に、「メンタリング」を行っている。学校で自主的に「e−ランニングスタジオ」を作って、ネット上講義も行っている。
人一倍の投資や関心のおかげで、ディミゴの大学進学業績は優れている。入学生のレベルは、中学の内申上位15%ほど。しかし、私教育無しに全員、寮での生活を3年間行った後、生徒らの平均成績は、修能上位3%へと高騰した。卒業生の半分以上はソウル所在の上位圏大学に進学している。
IT特性化高校にふさわしく、同分野での業績はもっと優れている。eビジネス科、デジタルコンテンツ科、ウェブプログラミング科、ハッキング防御科の4科の全校生徒数は630人。彼らは012年、韓国情報オリンピアードでグランプリ、金賞、銀賞を総なめし、国際情報オリンピアードでは銅賞を受賞した。高校生起業分野では、「大韓民国人材賞」も受賞した。
早くから理論や実務を身につけた在学生らはすでに、起業や雇用創出で成果を挙げている。「アプリ創作サークル」は、180件あまりのアプリケーションを開発して、90万件のダウンロード記録を立てており、サークル内の7チームは事業者として登録するなど、実際、起業にも成功した。同校内の4つのIT研究チーム、18起業サークルには、計255人が参加している。在学中、または卒業直後に起業した生徒や学生らは、大学での勉強と事業とを両立させている。
同校にも悩みがある。「IT英才」として育成された生徒らが、大学進学で不利益を受けることだ。政府が、「高卒就職文化を構築する」という趣旨で、大学枠の5%だった特性化高校の同一系列への進学クォーターを、1.5%へと減らしたためだ。特性化高校は、国語や英語、数学の授業時間が規制に縛られている。言語や数理、外国語、探求関連カリキュラムの授業時間が、一般系高校の半分ほどに制限されている。
キム理事長は、「料理や美容など、大学に進学しなくても仕事をうまくこなせる特性化高校とは違って、IT分野は、高校過程で学んだ基礎を活用して、大学に進学した後、高級人材へと成長できるよう道を切り開くべきだ」と強調した。
氏は現在、特性化高校のみで作ることのできるIT高校のカリキュラムに、科学高校や外国語高校のように、「特殊目的高校(特目校)」を導入しなければならないと指摘した。キム理事長は、「科学高校の卒業生は医学部に偏り、外国語高校の卒業生は語学科とは無縁な学科に進学しているのに、特目校と分類して優遇しながら、同時代のあらゆる産業や学問の基盤であるITは、前近代的な規制で手足が縛られている」とし、「教育科学部が、小中等教育法の施行令のみ見直せば可能なことだ」と主張した。IT特目校を作れば、英才らは高校段階で起業もし、大学に進んで融合させ、若者らのための雇用を創出できる高速道路を作ることになるという指摘だ。
IT特目校を、全国の科学高校(英才高校を含めて22校)の数だけ設立すれば、ディミゴの教職員(59人)基準で、約1300件の教職員雇用が生まれる。産学兼任教師の定員枠の規制を解除し、国語や英語、数学の授業制限を緩和して教科教師を増やすことになれば、1校当たり最高100人、2200件あまりの雇用創出ができるというのが、キム理事長の主張だ。
これらの学校の財学生らのIT開発や起業などで派生する雇用件数も、同様に大きいだろうと見込まれている。キム理事長は、「マイクロソフトの創業者やその妻が設立した「ビル&メリンだ・ゲイツ財団」が、米公教育の再生のために選んだ方式は、各学校にIT教育のカリキュラムを取り入れることだ」とし、「未来の雇用に向け、IT教育を集中的に強化させなければならない」と指摘した。