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哀悼の色

Posted October. 09, 2019 08:32,   

Updated October. 09, 2019 08:32

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傷に敏感な芸術家がいる。『すべての、白いものたちの』を書いた作家、韓江(ハン・ガン)もそのような芸術家に属する。

『すべての、白いものたちの』が表す傷は、厳密に言って作家のものではない。産まれて2時間後に死んだ姉に関することなので、傷は母親のものと言うべきだ。そのことが起きた時、作家は世の中にいなかった。それが作家の傷になったのは、母親の話が心に残ってからだ。一人で子どもを産み、子どもの黒い目を見つめて、「お願いだから死なないで」と繰り返す母親のつぶやきを何度も聞き、母親の傷と痛みが自分のものになった。母親は子どもについて「餅のように顔が白い女の子」だったと話した。作品のタイトル『すべての、白いものたちの』は、死んだ娘の顔の色を指す母親の形容詞を借用したものだった。「白い」という色と対比される傷と痛みと哀悼の色。

作家がポーランド・ワルシャワにいた時のことだった。作家は、信じ難い実話を読んだ。ベルギー人家庭の養子となって生きたユダヤ人男性の話だった。その人にはおかしなことがあった。はっきりと聞き取れない子どもの声がいつも聞こえるのだった。18歳になって、自分に6歳でワルシャワ のユダヤ人ゲットーで死んだ兄がいたという事実を知った。それで、ポーランド語を習い始めた。後で分かったことだが、それはナチスに逮捕される直前に恐怖で震えた兄の口から出た話だった。声の主人公は兄だったのだ。

作家はその話を読んで、「餅のように顔が白い女の子」だったという姉を思い出した。2時間後に死んだ姉も、ベルギー男性の兄のように魂になって弟を訪ねてきたのだろうか。訪ねてきたなら、2時間で死に、言葉を学ぶ時間がなかったので、話もできないだろうが、いかなる形で訪ねてきたのだろうか。気になった。その魂に耳を傾け、声を貸したかった。その結果が『すべての、白いものたちの』だった。哀悼の本質と倫理が何か証言する韓江式の哀悼日記だろうか。


キム・ソンギョン記者 tjdrud0306@donga.com