Go to contents

法と制度を毀損して国民を愚弄した曹国事態の悪い先例

法と制度を毀損して国民を愚弄した曹国事態の悪い先例

Posted September. 11, 2019 08:00,   

Updated September. 11, 2019 08:00

한국어

与党は無理な「曹国(チョ・グク)庇護」で、奇怪で強引な論理を動員してきた。このため制度の本来の趣旨を歪めて生まれた悪例が当然のことのようになることが懸念されている。曹国事態に絶望し、憤る民心を再び愚弄することになる。

文在寅(ムン・ジェイン)大統領が9日、曹国法務部長官の任命を強行した背景として、「本人の明白な違法行為は確認されなかった」と説明したことは、国会人事聴聞会の趣旨を曲解している。人事聴聞会は、違法行為の物証を探す場ではない。候補が省庁長官の重大な公職を遂行するのに適した道徳性や能力を備えているかどうかを問う場であり、その基準は国民の目の高さだ。

聴聞会制度が導入され、落した約20人のうち違法行為が明らかになって落ちた人はほとんどいない。大半が嘘が明らかになって民心が背を向けたか、自身と周囲の管理に失敗したケースだった。この政府で落ちた公職候補のケースも似ている。この基準で見ると、曹氏の任命が拒否されるべき理由は、歴代のどの候補とも比較できないほど溢れている。文氏の発言が先例になれば、今後聴聞会を開催する理由がなくなる。具体的な証拠で違法行為を判断するのは検察の役割だ。

聴聞会で候補の偽証疑惑がはっきりせずにやり過ごされるなら、これも危険な先例になる。曹氏は、聴聞会で娘の出生申告を亡くなった父親がしたと答えたが、家族関係登録簿の基本証明書には「父」と記されていた。亡くなった父親ではなく曹氏が申告したのだ。曹氏側は「亡くなった父親がしたことであり、『父』の表記は行政機関が誤って書いたのだろう」と説明しているが、偽証の疑いは避けられない。しかし、聴聞会で偽証した場合、証人は処罰を受けても、公職候補本人には処罰規定がなく、制裁することはできない。曹氏だけの問題ではなく、制度的な補完が必要だ。

曹氏が与党の支援を受けて国会で記者懇談会という名の「セルフ聴聞会」を開いたことも悪い先例を残した。聴聞会の日程を決める与野党協議が難航しているからといって、一方的に記者たちを呼んで自分の説明だけ並べ立てたことは、国会を無視した振る舞いだ。聴聞会の手続きを踏みつぶすような政治的な見せ掛けが再びあってはならない。大統領民情首席秘書官が法務部長官に事実上直行することが、2011年、李明博(イ・ミョンバク)政府時代、権在珍(クォン・ジェジン)民情首席秘書官の法務部長官任命に続き再び起こったことも、二度とあってはならない。聴聞会を控えて、公職候補の一家に対して検察の捜査が始まったことも、今回はそれだけの特別な要因があったものの、乱発されてはいけないことだ。

曹氏の長官任命強行は、曹国事態の縫合ではなく新しい分裂の開始だ。曹国事態がもたらす暴風も無視できないが、既存の制度を無視したまま、陣営対決であいまいに片づければいいとして強行し、悪い先例になれば、民主主義と法治自体が揺らぎかねない。もはや、法と原則、常識と基準に基づいた社会的通念が崩れてはならない。