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雲で作ったパン

Posted April. 08, 2020 08:10,   

Updated April. 08, 2020 08:10

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想像の力で世の中を温かく純粋にさせる芸術作品がある。児童文学のノーベル賞と呼ばれる「アストリッド・リンドグレーン記念文学賞」を受賞したペク・ヒナ作家の絵本は模範的な例だ。

 

初作品の『ふわふわ雲パン』で始まり、『月のシャーベット』、『天女かあさん』、『あめだま』『ぼくは犬や』までの絵本は、純粋な童心の世界を広げてくれる。月が溶けてできた黄色の水でシャーベットを作ったり、どこからか現れた天女が仕事に行ったお母さんの代わりに病気の子どもの世話をしたり、あめで心の声を聞いたりもする。中でも最高なのは雲でパンを作る話だ。2人の子どもは、木の枝に引っかかっている雲をゆっくり抱えてお母さんのところに持ってくる。パンは雲ではなく小麦粉で作らなければならないが、お母さんはそうは言わない。子どもたちが作ることができるなら作ることができるのだ。お母さんは雲をこねて小さく丸くしてオーブンで焼く。お母さんと子どもたちはこんがり焼けた雲のパンを食べる。食べていると、忙しくて食事もせずに会社に行ったお父さんのことが気にかかる。子どもたちはバスに乗っているお父さんに雲のパンを配達する。雲のパンを食べて雲のように空を飛べるようになって。

子どもたちは遠からず雲でパンを作ることができないことを知るだろう。空から来た天女、月のシャーベット、魔法のあめだまが存在しないことも知るだろう。それでもその想像の世界がどこかに消えることはない。それは心に中に残り、いつか世の中を眺める、澄んで温かい豊かな眼差しになるだろう。大人だからそのような想像の世界が必要でないということはない。その世界は大人にこそ必要かもしれない。疲れた暮らしをしていると、少しずつ鈍くなり、失ってしまうのが純粋さと温みの世界だから。魔法のあめだまと雲のパン、天女が登場するペク・ヒナ作家の絵本が、大人たちに慰めになる理由だ。