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韓国音楽の隠された発見、K・インディーの躍進

韓国音楽の隠された発見、K・インディーの躍進

Posted April. 03, 2020 08:30,   

Updated April. 03, 2020 08:30

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韓国大衆音楽界に先日、小さくて静かではあるが、大きな快挙があった。

先月26日、釜山(プサン)出身のバンド「セイ・スー・ミー」が、米有名コンサート番組「Live on KEXP」(QRコード)に出演したのだ。KEXPは、ワシントン州シアトルの歴史の長い公共ラジオ放送である。ワシントン州立大学の学生4人が意気投合して立ち上げ、1972年に最初の電波を打ち上げた。当時の名前はKCMU。主流のポップ音楽の代わりに、代案文化に興味のある大学生らがインディーロックを主に流した。その趣旨に共感して、「サウンドガーデン」「マッドハニー」などの伝説的バンドのメンバーらがボランティアDJを務めた。

#1〓米音楽界においてシアトルの存在感は独特である。トム・ハンクス、メグ・ライアン主演の映画「めぐり逢えたら」(1993年)を満たしたジャズやカントリーよりは、ぴょんぴょんと跳ねるロックで有名である。ジミ・ヘンドリックス(1942~1970)の故郷であり、1990年代を風靡したgrungeジャンルの培地でもある。四六時中、霧と雲、雨の多いここは、爆発的な代案音楽の産婆の役割を果たした。世界で最も有名なインディーロックレコード会社「サブポップ」も、シアトルにある。1990年代に世界を驚かせたバンド「ニルヴァーナ」が初めて契約した会社だ。

#2〓 KEXPの現在の存在感は、90.3MHzのラジオ周波数帯域をはるかに超える。ユニークで力強いバンドを求めて探し回る世界中の音楽ファンがユーチューブでフォローし、アラームの設定をしておくチャンネルになった。毎週ラジオとユーチューブの映像で一緒に公開する公演プログラム「Live on KEXP」は、新鮮なバンド、ベテランミュージシャンが繰り広げる生のままのエネルギーを捉えることで有名である。特に、ギター、鍵盤、ドラムを直接演奏するバンド音楽の聖地である。シガレッツ・アフター・セックス、ホイットニーなどの有名バンドもここを経て行った。

#3〓そういえば、シアトルと釜山は繋がっている。太平洋を媒介に非常に遠く、かすかにお互いに繋がった海岸都市だ。セイ・スー・ミーは、釜山広安里(クァンアンリ)で2013年に結成された。メンバーたちは、音楽練習をして疲れたら、ビーチに歩いて出てきて休んだりした。その時見ながらインスピレーションを得た橋は、米サンフランシスコのゴールデンゲートブリッジでも、英ロンドンのタワーブリッジでもない広安大橋だ。韓国ライブ音楽のメッカと呼ばれるソウル麻浦区(マポグ)からも、国の人口の半分が集まった首都圏からも遠く離れていた。先日会ったメンバーたちは、「ソウル弘益(ホンイク)大学前の目まぐるしい流行から離れて黙々と音楽を作ったのが、ひょっとすればセイ・スー・ミーのスタイルを形成したのかも知れない」と話した。

#4〓「Live on KEXP」のセイ・スー・ミー編を見る途中、私は何度もこっそり微笑みを浮かべた。司会は、「韓国釜山から遠く、ここまで来ていただき、ありがとうございます!」という言葉でセイ・スー・ミーを迎えた。「セイ・スー・ミーは、韓国でどれほど有名なんですか」「釜山はどんなところでしょうか」のような司会の質問に、チェ・スミ(ボーカル兼ギター)は、緊張した様子が歴然だった。子供のような英語でカタコトで答えた。話したい言葉は語りつくせなかった。「フレンズを見て、英語を覚えましたよ」と言えるような余裕はなかったが、その姿が、より暖かく迫ってきた。

#5〓演奏が始まると、セイ・スー・ミーは、別人になった。緊張と恥じらいは、熱いロックの前に滞りなく気化した。シアトルの中心部に、タフなロックのビートをよどみなく打ち込んだ。焼けるように暑いギターサウンド、ぶっきらぼうに突進するベースギターとドラム…。4曲のうち、特に6分を超える「Just Joking Around」が圧巻。そよぐように始まって、すぐに街を飲み込むような高波のように波打つ後半までドラマチックに追い込むロック。明滅する数々の小さな青い電球で3面を巻いた舞台、楽器とボーカルが放つエネルギーを絶妙に聴覚的空間に配置したサウンドのミックスは、さすがKEXPらしかった。そのようにシアトルは、まるで長い間、釜山を待ってきたとも言えるかのように、セイ・スー・ミーの音楽を熱烈に歓迎した。

#6〓かつて、国内音楽界にはこのような話があった。「韓国のインディー音楽は、結局国楽のようにエキゾチックな要素と結合しなければ、英米市場では受け入れてもらえない」という…。ジャムビナイ、シンシン、楽団光七(クァンチル)などが、その例になった。セイ・スー・ミーのKEXPライブを見れば、目の前の一つの薄い膜が剥がれる気分だ。

#7〓このライブを最近「家から出ない観覧族」にお勧めしたい。一方では、3月と4月の貸し切りがすべてキャンセルとなって、危機に陥った国内の小劇場やライブクラブが気になる。小さなステージの前に小さな椅子を置いて、小さな音楽家たちに気軽に舞台を許したこれらの小さなスペースが、他ならぬジャムビナイを抱き、セイ・スー・ミーを育てた土壌であるからだ。