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家族画のどんでん返し

Posted January. 23, 2020 08:08,   

Updated January. 23, 2020 08:08

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良い身なりをした夫が2人の子どもを連れて寝室にいる。ベッドに横たわっている妻は、手を伸ばして彼らを迎えており、右には乳母のように見える女性が赤ん坊を抱いている。妻の出産を祝いに来た夫と子どもたちを描いた絵だろうか。

17世紀、英国の画家、ダヴィッド・デ・クランジュが描いた絵の中のモデルは、英国の貴族リチャード・ソルトンストール卿の家族だ。赤いベッドカーテンや衣装、華やかな室内装飾はこの家族の富と高い身分を示す。一見すると、夫が子どもたちと出産したばかりの妻に会いに来た様子を描いたようだが、実はその反対だ。ベッドに横になっている女性は、ソルトンストール卿の最初の夫人で、左の2人の子どもの母親だ。椅子に座っている女性は2番目の夫人で、自分が生んだ息子を抱いている。ソルトンストール卿が1つ屋根の下で2人の夫人と一緒に暮らしたわけではない。この絵を依頼した当時、妻はすでに数年前に他界し、再婚した夫人が息子を出産した直後だった。ソルトンストール卿は、息子の誕生を記念すると共に、早世した夫人を悼むために生きている人と亡き人が一緒にいる家族画を注文したのだ。絵のさらなるどんでん返しは、左の2人の子どもだ。服装のため2人とも娘に見えるが、実は娘のアンと息子のリチャードだ。当時それぞれ3歳、7歳だった。7歳頃までは男児も女児の服を着た当時の慣行によって、リチャードは長いドレスを着ている。

絵で最も重要な部分はソルトンストール卿の白い手袋だ。彼は、片方の手袋を外してベッドにいる夫人に渡している。白い手袋は哀悼の意味もあるが、約束を象徴する。子どもたちを育てて、財産も相続させるという約束だろう。白い服に白い布を頭にまいた妻は、息をひきとる直前だが、手袋よりも、幼い子どもに手を伸ばしている。最後のどんでん返しは夫の視線だ。手は最初の夫人の子どもたちとつながっているが、彼の視線は新しい妻と生まれたばかりの息子に向かっている。果たして彼は最初の夫人との約束を守ったのだろうか。

美術評論家