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騙し絵

Posted November. 21, 2019 09:21,   

Updated November. 21, 2019 09:21

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デンマークのコペンハーゲン国立美術館に行けば、目を疑わせるユニークな絵1点を見ることができる。ここの代表コレクションの一つだが、誰もこの絵の前面を見たことがない。常に背面だけを見せるからだ。「絵がなんでひっくり返しているのか?まだ設置が終わっていないのか?」。壁ではなく、床に置かれた絵を見ながら、観覧客が頻繁に投げかける質問だ。

結論から言えば、この絵は一度もひっくり返されたことがない。絵の額縁の裏を描いたからだ。現代美術のようだが、驚くべきことに350年前の北欧画家の絵だ。フランドル(旧ベルギー)出身だったコルネリウス・ヘイスブレヒツは、「トロンプ・ルイユ」というジャンルに長けていた。「目をだます」という意味のフランス語から由来したトロンプ・ルイユは、実物と勘違いするほど精巧に描かれた騙し絵をいう。現代に流行している「トリックアート」の元祖だ。

17世紀、欧州の王や貴族の間では、日常生活の中ではなかなか見られない希少な物や美術品で展示室を飾ることが流行った。ドイツ語圏ではこれを「驚異の部屋」という意味の「ヴンダーカンマー」と呼んだ。ドイツで活動していたヘイスブレヒツは1668年、デンマークに行ってフリードリヒ3世の宮廷画家となった。彼はデンマークで過ごした4年間、王のヴンダーカンマーのために計22点の騙し絵を描いた。主に静物画や状差し、画材や楽器がかかっている壁などを描いたが、この絵は、珍しいことに絵の裏面がテーマだ。複雑な構図の精巧な絵も数ヶ月の間に数多く描いていた画家は、比較的単純な絵の裏面を描くために、なんと4年を捧げた。絵が完成した時、王の反応はどうだったのだろうか?おそらく、自分の目を疑って驚き、感心したのだろう。

これらの騙し絵は、私たちの目の限界だけでなく、認識の限界を考え直させる。目に見えるものが本物ではないかもしれないと警告しているのだ。また、画家は絵の裏面を通して、真実はいつも現象の裏に隠されているので、洞察の目を育てなければならないと言いたかったのかもしれない。

美術評論家