Go to contents

鏡を見る女

Posted November. 14, 2019 09:08,   

Updated November. 14, 2019 09:08

한국어

長いウェーブヘアーの女性が鏡をのぞいている。右手には手鏡を持ち、左手は髪をなでている。肌は白く、頬は赤い。少し疲れているようにも、考えに浸っているようにも見える彼女は誰なのか。画家はなぜ鏡を見る様子を描いたのか。

この絵は、19世紀のフランスの写実主義画家、ギュスターヴ・クールベが最も大切にした肖像画だ。モデルは、ジョアンナ・ヒファーナンというアイルランド女性で、「ジョー」という愛称で呼ばれた。彼女は、クールベの友人画家、ジェームズ・マクニール・ホイッスラーのモデルで、恋人だった。貧しい移民の娘だった彼女も画家だったが、モデルで生計を維持していた。当時の社会通念上、特にヌードモデルは売春婦と同様の扱いを受けたため、ホイッスラーの家族は彼女を受け入れなかった。しかしホイッスラーは、一時、自分の絵の販売権限を任せるほど彼女を信頼した。

この絵は、3人がフランス・ノルマンディ地域で共に過ごした時に描かれた。当時、クールベは47歳、ホイッスラーは32歳、ジョーは23歳で年齢の差はあったが、彼らは信頼し合い、深い友情を分かち合った。クールベは、赤くて艶のあるロングヘアのジョーの魅力に完全に引き込まれたようだ。ほぼ同じ絵を4点も描いた。題名にも、彼女の名前ではなく愛称の「ジョー」をつけた。当時ではまれなことだ。特にこの絵は、画家自身が所蔵のために描いたもので、生涯誰にも売らなかった。

鏡を見るというのは自分を見つめる行為だ。クールベは、ジョーが鏡を見て、自分がどれほど魅力的な女性かを自覚するよう望んだのだろうか。あるいは彼女の些細な日常さえも温かい視線で眺める自分の思いを伝えたかったのだろうか。ノルマンディで3人の間に何があったかは分からないが、ジョーは翌年パリに行き、クールベの話題を呼んだヌード画のモデルになる。変わることのない友情はあっても、揺るがない愛はないということを証明するかのように、その後ジョーとホイッスラーは恋人関係を清算した。



キム・ソンギョン記者 tjdrud0306@donga.com