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今年ソウル建築賞最優秀賞を受賞した西村の無目的ビル

今年ソウル建築賞最優秀賞を受賞した西村の無目的ビル

Posted August. 22, 2019 09:14,   

Updated August. 22, 2019 09:14

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「無目的」

ソウル景福宮(キョンボクグン)の隣町である西村(ソチョン)の古い韓屋の間に4階建てのコンクリート打ちっぱなしの建物に小さく書かれた名前である。道を歩いていると、人々が自然に建物に集まり、内部に入ってきた人も、迷路のような空間で水が流れるように徘徊するようになるという意味から付けられた名前である。

1階には手工芸品の売り場やデザイン製品のショップがあり、2階には写真スタジオ、3階にはギャラリー、4階に入った「テチュン遊園地」のバーは涼しげな前面ガラスから西村と仁王山(インワンサン)の風景を一望できるので、インスタグラムスポットに挙げられる。「テチュン(大虫)」とは、朝鮮時代に虎を指す言葉。仁王山にぴったり当てはまる名前である。

今年、ソウル市建築賞・最優秀賞を受賞したこの建物は、商業ビルではあるものの「公共性」で高い評価を受けた。この建物の下に開いた小道を利用すれば、建物の前のピルウン大通りと裏通りにある中華料理店「ヨンファ楼」や「テオ書店」などのホットプレイスを簡単に往来できる。それまで住民や観光客が一ブロックをぐるりとまわらなければならなかった手間を減らす「ショートカット(shortcut)」ができたことになる。

実際、昨年この建物の完成後、この小道を初めて使った人は消防士だった。ヨンファ楼の内装工事中に火災が起きたとき、119の隊員たちが広いピルウン大通りに消防車を止めて、この建物を通る道を通じて火を消した。

2つの棟で構成された無目的の建物の内部も、迷路空間のようにできている。階段とテラスにつながっているのに突然壁に妨げられ、横の小さな脇戸につながる。また、ループトップガーデンから4階、3階まであいた中庭は、建物の内部からでも、天から降る雨や雪に直接浴びるユニークな屋外空間となっている。先月、無目的ギャラリー(3階)で開かれたメディアアーティスト・ソン・ホジュンの「On/off Everything」展の開幕式では、さまざまな電子機器と光のショー、音楽が調和した「ホット」な感性のパーティーが開かれた。この建物を設計したモールドプロジェクトのチョン・ヨンソプ所長は、「切れそうで繋がり、目的地に達したようだが、また別の出口につながる、徘徊しながら楽しめる空間を演出したかった」と話した。

ここには元々家庭用液化石油ガス(LPG)の貯蔵所として使われていたコンクリートの建物があったという。無目的ビルも、元の風景と同様にコンクリート打ちっぱなしに仕上げた。しかし、新築建物のコンクリートの壁が滑らかではなく、穴がいたるところに開いており、泥で作ったようにでこぼこしていて荒い。わざわざ厚くしたコンクリートの外壁に、高圧散水装置で水を打って傷を作る「チッピング(Chipping)」工法を使ったのだ。水圧の大きさに応じて、壁には大小の傷ができ、ひどいところは鉄筋が見えるほどだ。これにより、洗練された新しい建物であるが、古い西村にも自然に似合う風景となった。


田承勳 raphy@donga.com