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指揮棒一つで100人を掌握した最初の女性

指揮棒一つで100人を掌握した最初の女性

Posted November. 07, 2019 09:08,   

Updated November. 07, 2019 09:08

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「(音楽家たちを)コントロールしたいのか?」

指揮は長い間、女性に許されなかった最後の領域だった。映画の中の男性指揮者カール・ムックの言葉からも分かるように、数十人から100人を超える他人に指示を出し、自分の意志を強制する行為は女性に適していないと思われたからだ。

14日公開するオランダの映画「レディ・マエストロ」(マリア・ペーテルス監督)は、禁断の場所に足を踏み入れた女性指揮者アントニア・ブリコ(1902〜1989)の人生にカメラを突きつける。ブリコはカリフォルニア大学バークレー校で指揮を専攻し、ベルリン音楽アカデミーを卒業して、ニューヨーク・フィル、ベルリン・フィル、メトロポリタンオペラを指揮した初の女性指揮者だった。

映画の中のブリコ(クリスタン・デ・ブラーン)は、女性指揮者に向けた数々の偏見と立ち向かう。彼女が愛した男も「私の花嫁アントニア」を望むだけで、指揮者の配偶者になることを望まない。さらに恋人の意志を挫くための策略を立てる。

映画末尾の字幕は「英国アルバム専門誌グラモフォンが選んだ世界20大オーケストラの首席指揮者や音楽監督はこれまで出てこなかった」「世界50大指揮者の中に女性はいない」と物足りなさを表す。しかし、時代は変わった。全世界のポディアム(指揮台)に上がる女性の数は毎年増えている。「強要型」から「説得・和合型」に理想的指揮者像が変わっていることもその理由だ。

米国のマリン・オールソップ(63)は、2007年から米国名門オーケストラ・ボルチモア交響楽団の音楽監督として成功した任期を送っている。豪州のシモーネ・ヤング (58)は2013年、ドイツ・ハンブルグ・フィルハーモニー管弦楽団とブラームス交響曲全集を発売して好評を得た。2021年は、ドイツ・バイロイトワーグナーフェスティバルで初めてワーグナーのオペラを指揮する女性指揮者になる予定だ。

指揮名門国として名高いフィンランドの代表楽団・ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団は、女性であるスザンナ・マルッキ(50)が率いている。カナダのソプラノ・バーバラ・ハンニガン(48)は、現代音楽専門指揮者としても名をはせている。韓国のソン・シヨン(44)は、ソウル市立交響楽団副指揮者と京畿(キョンギ)フィルハーモニー管弦楽団の常任指揮者を経て、ドイツを中心に欧州で大活躍している。

映画「レディ・マエストロ」は、ずっと次のシーンが気になる興味深いストーリーラインを構成したが、多くの部分は想像に基づいている。女性指揮者を越え、「女性専門職業人」に対する映画の中の1920、30年代の社会的偏見は、多くの場合過度な設定と感じられる。

それが気になるなら、このような「事実」はどうだろう。ロシア出身の英国指揮者ヴァシリー・ペトレンコは2013年のインタビューで、「指揮台上のきれいな女性は、演奏者を別の気にさせる」と発言して、それを撤回するのに冷や汗をかいた。3年後はロシアの指揮者、ユーリー・テミルカーノフが、「指揮の本質は力である。女性は力が落ちる」と言って物議をかもした。実際アントニア・ブリコは数々の「最初」の記録を立てながら1970年代まで活動したが、今日彼女の名前が表紙に掲載されたアルバムはリストに残っていない。

13日、ソウル芸術の殿堂コンサートホールでは、「指揮者チャン・ハンナ」に会える。神童チェリストを経て、2017年からノルウェーのトロンハイム交響楽団の首席指揮者として活動しているチャン・ハンナは、このオーケストラの初の来韓公演でチャイコフスキー交響曲第6番「悲愴」とグリーグのピアノ協奏曲(イム・ドンヒョク共演)などを指揮する。


ユ・ユンジョン記者 gustav@donga.com