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芸術になったビール缶

Posted May. 30, 2019 08:56,   

Updated May. 30, 2019 08:56

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暑い夏の日に飲む冷たいビール一杯は、小さいが確実な幸せを保証する。別名「ソファクヘン(些細ながら確実な幸せ)」は、昨年、韓国を襲った最も熱い消費トレンドだった。大きな夢を持つことも、達成することも難しい時代、日常の小さな幸せを追求する人々が増えるのは当然のことかもしれない。

約60年前、米作家ジャスパー・ジョーンズが作ったこの作品は、まるでソファクヘントレンドを予見していたかのようだ。30歳の注目される若手作家ジョーンズは、普段からよく飲んでいた缶ビールの缶でブロンズ彫刻を作った。モデルは、真鍮色の缶の上にシンプルなデザインの楕円形ラベルの付いた「バレンタインエール」というブランドだった。外見上は、本物の缶と彫刻缶の間に大きな違いがなかったので、ジョーンズはラベル上に、絵のような筆づかいの跡が見えるように色を塗った。缶と台座の底面には、親指の指紋も押した。工場で大量生産された缶とは違う「ハンドメイド」を強調するためだった。

当時、ニューヨークの美術界は、ジャクソン・ポロックやウィレム・デ・クーニングが主導するエリート的な抽象表現主義が主流だったため、このような大衆的かつ身近な素材の作品は、既成画壇への批判や嘲笑として読まれた。ビールの缶だけでなく、米国旗や地図、的、数字など、日常でよく接するイメージや記号を作品の素材にした彼は、「ポップアートの父」という異名も得た。現在の生存作家の中で最も重要な米画家として認められるだけでなく、作品の価格が最も高価な家だ。彼の初期作の一点は、なんと1億1000万ドルで売れた。

実はビールの缶は、私たちが日常で接する最も些細なものに属する。中身が空になるとすぐに捨てられる。しかし、ジョーンズの選択で、私たちは普通のビール缶を新しい目で見ることになる。顔立ちやラベルのデザインに初めて着目し、ビール缶が象徴するわずかな日常と些細な物事の価値を考え直すことになる。存在するすべてのものの価値と、日常の中の幸せの意味を私たちに自ら改めて問うことになる。