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古い行政が「科学大国」を妨げる

Posted April. 12, 2019 08:44,   

Updated April. 12, 2019 08:44

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2016年末から東亜(トンア)日報に連載した「科学エッセイ」を最近終えた。物足りない文に紙面を許してもらった編集局に感謝している。振り返ってみれば、韓国国内よりは海外に、東アジア圏よりは英米圏に偏って研究を振り返ってみたような気がして残念である。幸いなことは生物学、数学、天文学、物理学、ロボット工学、医学、脳科学など、あまねく最新ニュースに接することができたことだ。

今、韓国科学技術界は、過度な実績主義と省庁間の利己主義、柔軟でない教育と創造性不在、悪い研究文化という4重苦に苦しんでいる。文在寅(ムン・ジェイン)政府が発足して間もなく、「科学技術事業の提案書に『第4次産業革命』という言葉が入ってこそ事業を獲得できる」という言葉が出回った。既存の製造業を含めて人工知能、モノのインターネット、ビッグデータ、ソフトウェア、ロボットを越えてブロックチェーンと仮想通貨までが、第4次産業革命のカテゴリに含まれた。大学街はもとより、各企業や研究所ではこの陰に位置するために既存の研究計画書を見直している。「創造経済」が幽霊のように出回っていた時と同じだ。

とある中小企業は、インターネットすらできていないのに、公務員たちはスマートファクトリーを強調して適用しようとしていると嘆いた。科学技術者たちは、様々な行政業務と会計合わせに追われて、研究開発は後回しにされている。科学技術なのか、科学行政なのか、なかなか見分けがつかないのが現状だ。科学技術教育の現場はなおさらひどい。教育統計を見れば、学校外の青少年数は数万人に上る。彼らを「学校外青少年」と呼ぶこと自体が不合理だ。すでに学校は、時空間と教師、学習者の境界が消えているのにだ。硬直した教育システムの中で柔軟な創造性を期待するのは難しい。

韓国国内の科学技術者に、ノーベル賞やフィールズ賞、アーベル賞の受賞者がいないのは、ある意味では当然の結果かもしれない。私たちが覚えている偉大な韓国の科学技術者たちは、本当に刻苦の個人的努力を通じて光を放ったケースが多い。優れた研究システムと文化、仲間意識やコラボレーションシステムが足りない。特に学縁、地縁、血縁という身分の制約は、まだ幽霊のように科学技術界にさまよっている。奴婢出身だったが、自激漏を作り出した蒋英実(チャン・ヨンシル)が、どのように死んだのかさえ知られていない。同じ時代、西洋の科学技術者たちは、貴族の後援に支えられて、科学技術を芸術の域に引き上げた。その後もコラボレーションシステムは、現代科学の地平を新たに切り開いた。ラジウムとポロニウムを発見したキュリー夫妻は、共同でノーベル物理学賞を受賞した。クリークとワトソンは、お互いの長所と短所を補完しながらDNAの二重らせん構造を解明して、ノーベル生理学医学賞を受賞した。アップルを創業したスティーブ・ジョブズには、スティーブ・ウォズニアックという素晴らしいプログラム開発者がいた。世界のすべての情報の中心となったグーグルは、ラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンがコラボレーションして誕生した。

韓国科学技術界が注目しなければならないのは、科学の本質だ。科学は、政治や行政、あるいは省庁や機関の利己主義ではなく、好奇心に満ちた創造性と健全な批判が本質だ。創造性と批判は、コラボレーションシステムの根幹となる。政府が指示する方向に研究し、上司の命令に従い、教授が要求する通りに実験すれば、韓国の科学技術は暗い影だけが増えるだろう。


李恩澤 nabi@donga.com