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「トレランス」が失われていくフランス

Posted October. 09, 2018 09:01,   

Updated October. 09, 2018 09:01

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先月19日、フランス・パリの上院議事堂の前に借家人200人余りが集まり、「私たちは占有者だが犯罪者ではない」と抗議した。国会が住宅に関する法(別名「エラン法」)を改正しようとすると、「貧しく家のない人の生活を脅かす」と反発したのだ。

これまでフランスの家主は毎年11月から3月までの5ヵ月間、いかなる場合であれ家に住む占拠者を追い出せなかった。家のない人が冬に路頭に迷った場合、寒さに苦しみ、最悪の場合、死に至る可能性もあるためだ。

 

3日、フランス下院は冬でも借家人の退去を許可するなど家主の権利が強化される内容のエラン法を通過させた。これまで家主が48時間以内に無断占拠者に出ていくよう要請しなければ追い出すことはできなかったが、関連条項が削除され、今はそのような期間なくいつでも退去させることができる。また、無断占拠者と見なされても退去まで2ヵ月間の猶予を与えた条項も廃止され、退去命令後直ちに追放される。契約書を書いた賃借人の場合、家賃を適時に払わなくても冬には追い出すことができないという規定は維持された。最小限の人権は保護しなければならないという趣旨だ。

自由、平等、博愛の三色旗で代弁されるフランスは、資本主義の中でも社会主義的連帯指向が強く、厳格な法治よりも人権と自由を強調する「トレランス(寛容)」の国で有名だが、それも色あせている。

街頭に多くの防犯カメラが設置された韓国と違って、フランスは防犯カメラの設置を敬遠してきた。国家の監視を増やし、個人の自由を侵害するという認識が強かった。しかし、数回のテロを経験して以降、警戒心が高まり、治安と秩序維持のためという理由で街頭の防犯カメラが急速に増えている。

パリのアンヌ・イダルゴ市長が4日、「フランスの日常で市民の移動の阻害になる非市民的な行動を根絶する」とし、パリ全域にカメラ900台を設置すると発表すると、野党が「野蛮な方法」と批判した。2016年に86人が死亡したトラックテロが発生したニースには、すでに2200台のカメラが街頭に設置され、テロの予防と不法駐車の取り締まりなどに使われている。

フランス全域の精肉店の店主、約1万8千人も恐怖に震えている。毎夜、菜食主義者たちが店のガラスに石を投げ、スプレーで「肉=殺人」、「殺人鬼」と書く攻撃が続いているためだ。精肉店だけでなく、魚、チーズ、ハンバーガー店にまで拡大している。

フランス精肉協会のジャン=フランソワ・ギアル会長は、「31年間精肉店を経営したが、このような暴力的なムードは初めてだ」と政府に保護を要請した。豚の屠殺の仕事をしているベンサン・イランさんは7日、「これまで殺人の脅迫を150回以上受けた。もう我慢できない」とし、仕事を辞める考えだ。


董正民 ditto@donga.com