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バルカン半島の戦士モドリッチ、爆弾が爆発する中でもボールを蹴ったチビが世界一のMFに

バルカン半島の戦士モドリッチ、爆弾が爆発する中でもボールを蹴ったチビが世界一のMFに

Posted July. 14, 2018 08:21,   

Updated July. 14, 2018 08:21

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1991年、クロアチアのザダルでサッカー選手への夢を育んだ6才のルカ・モドリッチ(33)は一生忘れることのできない悪夢のような現実に直面した。当時はユーゴスラビアからの分離独立を宣言したクロアチアの独立戦争が始まった時だった。

「お祖父ちゃんはどこにいるの?」。両親が仕事に出かけたら自分の面倒を見てくれる祖父が見えないと、モドリッチは大粒の涙を流しながら、父にこう尋ねた。祖父を含めた6人のクロアチア人はクロアチアの独立を阻止しようとしたセルビア反軍によって無残に殺害された。祖父を亡くした悲しみが消える前にモドリッチは家族と一緒に住んでいた家まで焼かれ、両親とともに避難先に使われたホテルを転々とする生活を余儀なくされた。

ホテル周辺で手投げ弾が爆発し、銃弾が降りかかった。電気は途切れ、給水も切れた。しかし、サッカーはモドリッチが厳しい現実を忘れる唯一の手段だった。ホテル近くの駐車場などで休まずボールを蹴った。当時、モドリッチが滞在していたホテルの職員は、英紙デイリー・メールの取材に対し、「戦争の中でもチビ(モドリッチ)はめげずにドリブルの練習をした。ホテル職員はみんなチビの大胆さに驚いた。爆弾が爆発して割れた窓ガラスより、チビがサッカーの練習で割った窓ガラスの方が多かった」と振り返った。

戦争の痛みは、モドリッチを「バルカン半島の戦士」に成長させた。モドリッチは、「クロアチアの人たちが作り出した奇跡と成功を理解するためには、戦争の傷について知らなければならない。戦争を経験しながら、私たちはさらに強くなった。私たちは簡単に崩れない」と話した。

強いフィジカルと精神力で武装したモドリッチは、ロシア・ワールドカップ(W杯)を通じて「世界最高の中盤の司令官」に生まれ変わった。MFのモドリッチは、ロシアW杯で2得点1アシストを記録し、クロアチア初のW杯決勝進出をけん引した。クロアチアが戦った6試合のうち3試合でモドリッチはマン・オブ・ザ・マッチ(MOM)に選出された。国際サッカー連盟(FIFA)によると、モドリッチは、W杯に出場した全選手のうち、最長距離(63キロ)を走ったという。強靭な闘志がなければ不可能なことだ。ハン・ジュンヒKBS解説委員は、「W杯の最高の選手はモドリッチだ。現代サッカーでMFに求められる相手のプレスをいなす能力や視野、クリエイティブさなどをすべて兼ね備えている」と称賛した。

モドリッチの体格は並みの欧州選手にしては小柄(172センチ、66キロ)と言える。子供の時は体が小さいため、地域のユースチーム入団にも失敗している。だが、強いメンタルの持ち主は、たゆまない練習とマインドコントロールを通じて克服した。モドリッチは「サッカーはパワーとサイズ(屈強な体格)でやるものではない」と強調する。ディナモ・ザグレブ(クロアチア)で活躍していたモドリッチが2008年にイングランド・プレミアリーグ(EPL)のトッテナム・ホットスパーに加入した時、クロアチアのメディアは、モドリッチが激しくぶつかり合うEPLで生き残れないだろう、と悲観的な見方を示した。しかしモドリッチは、成功することを確信していた。「体が小さいから成功できないという言葉は、ユースの時からさんざん聞いてきた。しかし、そう言われるほど戦意を覚えたし、私はいつも周囲の偏見に打ち勝った」。

モドリッチは、トッテナムで堂々とレギュラーを掴み取り、2008年から2012年まで159試合に出場し、17得点を挙げた。この時の活躍で、2012年8月、スペインの名門レアル・マドリードに入団した。トッテナムでモドリッチを指導したハリー・レドナップ監督は、「モドリッチのような真面目な選手を指導するのは、すべての監督の夢だ。練習場に入ったモドリッチは、自分にボールがあるときとないときとを想定した二つの場面で、守備を交わす個人技とパスを、グタグタになるまで練習した」と話した。

上半身の骨格が小柄で、国内のファンからは「モドリッチ姫」とも呼ばれたが、下半身の筋肉は頑丈だ。モドリッチは「丈夫な太ももなどは父からの譲りもの。丈夫な下半身でボールをキープするから、誰も自分から簡単にボールを奪えないのだ」と話した。クロアチア軍で航空技術者として勤めているモドリッチの父は、経済的に厳しい家庭環境の中でもモドリッチをサッカー学校に送るなど、全面的に支えてきた。

クロアチアの主将モドリッチがフランスとの決勝で自国に初のW杯優勝をもたらすことができれば、クリスティアーノ・ロナウド(ポルトガル)やリオネル・メッシ(アルゼンチン)を抜いて世界最高の選手になることも可能だ。クロアチアのレジェンド、ダボル・シュケル氏は、「モドリッチはグラウンドとドレッシングルームで精神的な支柱としてチームを立派にリードしている。私にもバロンドール投票権があるなら、モドリッチを票を入れたい」と話した。バロンドールはサッカー界の最高権威の賞だ。海外のブックメーカーでは、W杯前は5位圏だったモドリッチがバロンドールを受賞する確率が、クロアチアが決勝に進出したことでロナウドに次いで2位まで上がった。モドリッチは「今は個人賞の受賞を考える時ではない。まずはクロアチアがW杯の優勝トロフィーを掲げることができるよう全力を尽くしたい」と語った。


鄭允喆 trigger@donga.com