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「暴力の世紀」希望の生命水を求めて…

Posted July. 14, 2007 04:44,   

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バリ王女はブルラ国のオグ大王の7番目娘だ。娘という理由で捨てられて宮の外で育ったが、10代になって病気の親と再会した後、親を救うために幻世と現世を出入りする苦労の末に生命水を手に入れる。

「バリ王女」の説話は韓国フェミニズムの重要な敍事に数えられるが、作家の黄碩暎氏(64・写真)は、一人の少女の親孝行から世界を救おうとする意志を見た。黄氏の長編「バリデギ」は、この古き敍事を21世紀の舞台で引っ張り出した作品だ。

現代のバリは王女ではない。彼女は咸鏡北道(ハムギョンブクト)清津(チョンジン)港事務職員の7番目の娘で生まれた。息子を期待した親には恨まれるが、その末娘には魂や鬼、けもの、唖とも会話ができる能力がある。北朝鮮の経済事情が急激に悪化して家族がばらばらになってから、バリは伝説のバリ王女のように世をさまようことになる。

作家はバリの世の渡りを通じて、北朝鮮の惨状を生々しく見せてくれる。飢饉と洪水で死んでいく人々、 国境地帯でやっと食いつなぎながら生きて行く北朝鮮脱出住民たち、借金のため密航船に乗りこんで人身売買団に性暴行と虐待にあう女性たち…。

著者が「今、振り返らない我が家の裏庭」と呼ぶ所だ。「バリ」(捨てられたという意味)という名前が意味しているように「捨てられた」所の悲惨な実態を告発しながら、作家は裏庭に鈍くなった読者たちを気づかせる。

黄氏の関心は北朝鮮脱出少女のバリが渡り歩く敍事にもっと集められる。ヨーロッパ滞留3年目を迎える作家は、世界の話題が「移動と調和」であることに気づく。民族やイデオロギーではなく、真に共存を模索するのが今の世界のテーマーであることを知り、作家は中国を転々とするバリを英国ロンドンに行かせる。足マッサージ店に就職して生計を立てるバリが出会った配偶者はパキスタン人のアリーだ。

バリ王女が生命水を探しているように、北朝鮮脱出女性のバリは子供を持つことで救援を夢見る。

ところが小説の結末は、2005年にあったロンドン爆弾テロ場面だ。暴力は続いているし「世界市民」であるバリと私たちの皆から消されている救援の課題は現在進行形だ。

それでも作家は、小説の中のアブドルお爺さんの声を通じて「希望を捨てれば生きていても死んだも同然」と叫びながら、より良い世の中のための歩みを止めてはならないと訴える。



kimjy@donga.com