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一点の絵の力

Posted March. 26, 2020 08:22,   

Updated March. 26, 2020 08:22

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戦争は全てのものを止める。第二次世界大戦当時、ドイツ軍の空襲で英ロンドンの美術館や公園会場は一斉に閉鎖となった。「皆の美術館」と呼ばれたナショナルギャラリーのコレクションは、ウェールズの炭鉱地下に移され、戦争が終わる時まで帰ってこなかった。ところが、ティツィアーノのこの絵は、戦争中であるにも関わらず先に戻されて来て単独展示会まで開かれた。なぜだろうか?

戦争の時、空いていた美術館を満たしたのは、ロンドンのアーティストたちだった。マイラ・ヘスをはじめとするミュージシャンたちが毎日、「ランチタイムコンサート」を開き、美術家は展示を開いて市民に勇気を与えた。芸術の力を見抜いた美術館館長は、ウェールズからティツィアーノの絵を持ってきて壁にかけた。ただの一点で開く展覧会だった。イタリア・ルネサンス美術の巨匠が若い頃描いたこの絵は、復活したキリストがマグダラのマリアの前に初めて姿を現す聖書の中のシーンを描写している。

驚いたマリアが、ひざまずいて手を伸ばして師匠に触ろうとすると、イエスは後ろに下がりながら、「私に触れるな」と言う。イエスは、弟子たちが彼の肉体にこだわることを望まなかったからだ。画家は、イエスとマリアを垂直と水平構図に配置した。赤いドレスを着て座っているマリアは、地上の世界に属している凡俗な人間を、白いガウンをまとって、ほぼ裸で立っているイエスは天の世界に属する霊的存在を象徴する。イエスのジェスチャーと言葉はマリアを遠ざけているように見えるが、彼女に向かって傾けた上半身と目つきは、変わらない愛と保護を約束している。愛と復活、保護と約束のメッセージを与えるこの絵は、戦争の恐怖と不安に震えていたロンドン市民に大きな慰めと希望を与えた。

ナショナルギャラリーは、毎月一点のコレクションを公開する展示やコンサートを終戦の時まで継続し、この伝統はオンライン展示「今月の絵」と美術館コンサート「ピアノデー」を、今も続けてている。戦争は全てものを止めたが、同時に逆転の発想の新たな挑戦と実験を開始させた。