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人形を診察して

Posted March. 18, 2020 08:08,   

Updated March. 18, 2020 08:08

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見ているだけで心温まる芸術品がある。米国のイラストレーターで画家のノーマン・ロックウェルが40代後半だった1942年に描いた「医者と人形」という絵がそうだ。白髪の医者がミント色のワンピースを着た少女が抱いている子どもを診察する様子を描いた絵だ。

 

漢方医院に行けばそうするように、医者は子どもの手首に自分の指を当てて時計を見て脈拍を測っている。より正確に言えば、医者は子どもの手首に指を当てているのではない。子どもは医者の指に腕が隠れるほど体が小さい。診察する医者も、それを心配そうに見ている少女もとても深刻な表情だ。ところで、医者が診察する子どもは実は黄色いパジャマを着た人形だ。あきれたことに医者は人間ではなく人形を診察しているのだ。

画家は、この絵の原型で有名な1929年に描いた別の「医者と人形」で、医者が人形の胸に聴診器を当てて診察する様子を描いたが、今回は脈をとる医者を描いた。以前の絵では、人形は人形のようだったが、この絵では人形が人間のように服を着ていて人間のように見える。

この絵は、美しいストーリーを展開させる。少女は、往診に来た医者に自分の人形が、いや赤ん坊の具合が悪いようだと診察を求める。少女にとって人形は、人形ではなく親が自分にするように世話をしなければならない本当の子どもだ。少女は深刻だ。医者は少女の頼みを無視せず、丁寧に「子ども」の診察を始める。少女と目線を合わせたのだ。「赤ちゃんは大丈夫ですか」と少女の目が尋ねている。医者は心配するなというように脈をとっている。彼には事実を突きつけるよりも、少女の心が重要だ。医者は人形ではなく少女の心を診断している。

少女はいつか大人になってこの時のことを思い出し、医者の思いやりに感動するかもしれない。時にはそのような思いやりを照らし出すのが芸術だ。ロックウェルの絵のように。

文学評論家・全北大学教授