Go to contents

感謝と肯定のホルモン「セロトニン」

Posted March. 16, 2020 07:53,   

Updated March. 16, 2020 07:53

한국어

映画「パラサイト 半地下の家族」で主人公のキウが英語の家庭教師になり、ダヘと初めて会うシーンがある。無愛想なダヘに計画的に接近したキウが手を突然握るシーンで、ダヘは顔を赤らめて震える。その瞬間からキウに対するダヘの態度が変わる。キウを好きになったのだ。手を一度握ったからといって、相手に自分を好きにさせることができるだろうか。

むろん、映画には誇張された部分がある。また、現実で相手の同意なく手を握ることは失礼な行為になるかもしれない。しかし、心理学的には可能な現象だ。人の心理は、身体の状態によって支配されるためだ。近代心理学の創始者とされるハーバード大学の教授、ウィリアム・ジェームズ(1842~1910)はこのような現象を「私たちは悲しくて泣くのではなく、泣くために悲しく、うれしくて笑うのではなく、笑ってうれしい感情を覚える」と表現した。

 

特に肯定的な感情形成と関係があるホルモンであるオキシトシンとセロトニンの分泌原理を活用すれば、より簡単に相手の好感と信頼を得ることができる。まず、オキシトシンは、脳内で神経調節物質の役割をするホルモンで、感情的な絆や信頼の形成に関係するという。オキシトシンの分泌を促進する最も基本的な方法は接触だ。家族や近い間柄なら、手を握ったり長い抱擁をすれば、オキシトシンの分泌が促進される。

 

手を握ったり抱擁するといった接触が難しいなら、感情的な応援になる温かい言葉をかけることも方法だ。称賛もいいが感謝まで加えるなら、その効果はさらに大きくなる。例えば、会社でチーム長がチーム員に、「プロジェクトをうまく終えることができた」とただ称賛するよりも、「プロジェクトをうまく終えることができ、ありがとう」と感謝まで示せば、相手はより温みを感じるだろう。

称賛だけなら、相手の立場で自分が評価されているという感じを受けることはできるが、感謝にはそのような感じがないためだ。

 

第2に、セロトニンは冷静で安らかさを促進し、憂鬱な気持ちやいら立ちを緩和するホルモンだ。抗うつ治療剤には、セロトニンの再吸収を防ぎ、シナプス上でセロトニンの活動を延長するものがあるという。セロトニンの分泌が多ければ多いほど心が安定し、相手の言葉に共感する確率が高まる。

他人と意思疎通する時、セロトニンの分泌原理を活用する方法として次の3つを提案する。第1に、相手と一緒に陽の光を浴びることだ。晴れたのどかな日に陽の光を浴びて憂鬱な気持ちになることがあるだろうか。陽の光はセロトニンの分泌を促進する。話したい相手が職場の同僚なら、オフィスからしばらく抜け出して陽の光があたる場所で話をするのはどうか。あなたの話に共感する確率が高まるだろう。

第2に、相手と一緒に体を動かすことだ。どんな方法であれ体を動かすと、セロトニンを生成するニューロンの発火の頻度が増え、セロトニンの分泌が促進されるという。一緒に体を動かす活動、例えば歩きながら話をすれば、相手からより肯定的な反応を期待できるだろう。

第3に、相手に幸せな思い出を回想させることだ。天気が悪く、一緒に体を動かせる状況でないなら、会話の前に相手が楽しく幸せだった瞬間を思い出させよう。自分に肯定的なことを思い出させて、セロトニンの生成を増加させるためだ。相手が幸せな瞬間を思い出す質問をしてみるのはどうか。入社して間もない同僚に、「会社の採用合格の知らせを聞いた時、どんな気持ちだったか」と尋ねたり、旅行にした同僚には「旅行で特に良かったり楽しかったのはいつか」と尋ねることだ。子どもがいる同僚には、「子どもがいつ一番かわいいか」と話しかけてみよう。

 

人と話ができなくて悩んでいるなら、先に相手が自分の話を受け入れることができるよう環境を変えてみることを推薦する。天気の良い日、温かいコーヒーを手に歩きながら話をしてみることだ。温かい感謝の言葉も添えて。むろん、会話の導入部で、その人が自然に笑みを浮かべるような質問をすればさらに良いだろう。