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嫌悪の刃

Posted February. 03, 2020 08:21,   

Updated February. 03, 2020 08:21

한국어

「とある集団への嫌悪感を仕方ないと思って、思いうがままに行動するとき、不平等はさらに深刻になる」(キム・ジヘ「善良な差別主義者」)

大学生の時に、欧州に旅行に行ったことがある。欧州は初めてだったが、気にしていたことと違って、無事に行ってきた。ただ、生前に経験したことのなかった人種差別の経験は、自分なりの衝撃だった。もちろん周りの事例を聞いてみれば、私のことはそれほどひどいものではなかったらしいが、とにかく夜の街を歩いて、知らない人から悪口を聞かされることは、あまり経験することではないからだ。特に「この中国人のくそったれは消えれ!」のような言葉の数々。私は、彼がなぜ一人で静かに歩いていた私に対して、そんなことを口にしたのか知らない。その日によって、癪に障ることがあったのかもしれないし、彼に中国が嫌いなだけのそれなりの理由があったのかもしれない。合理的に考えてみれば、私もその言葉を聞いて確実に傷つく理由もなかった。私は中国人でもないし、すべての欧州人が彼と同じではないことを知っているから。ただ、韓国以外のところであれば、私の個性はいつでも消去され、「中国人」あるいは「アジア人」で置き換えられることがあるということ、単に存在そのものだけで誰かには嫌悪の対象になりうるという事実は、実は少なからぬ衝撃的かつ手痛い経験だった。

新型コロナウイルスを機に、中国に対する嫌悪が徐々に広がっている様子だ。中国人が多く居住するソウル大林洞(テリムドン)地域の衛生文化はめちゃくちゃだという記事も出てくる。彼らはただ、韓国に住んでいるだけで、中国に行ってきたこともなかったのに。もちろん、人々は安全を巡る心配やウイルスの恐怖のためだというが、ウイルスを懸念して予防することと、特定集団に対する嫌悪を積極的に伝播することは全く別の問題だ。彼らを見るたびに、かつて私に石を投げて悪口をしていたあの時の彼を思い出す。彼にもそれなりの理由は明らかにあったはずなのに。


李恩澤 nabi@donga.com