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メメント・モリ

Posted January. 09, 2020 07:51,   

Updated January. 09, 2020 07:51

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大使とは、最高権力者から命を受けて、外国に派遣された外交使節のことを言う。大使を意味する英語「アンバサダー」の語源はラテン語「Ambactus」で、臣下、家来などの意味がある。ハンス・ホルバインの「大使たち」は、16世紀の大使の姿を時代像と共に描いた傑作だ。ドイツ生まれだが、英国の宮廷画家として働いていたホルバインは、1533年、フランス大使らのロンドン訪問を記念してこの絵を描いた。縦、横がそれぞれ2メートルを超える巨大な画面の中には、実物大の二人の男が登場する。彼らは、緑のカーテンを背景に、珍しいものがのせられた棚を挟んで立っている。高価な毛皮コートをかけた堂々とした左の男性は、当時29歳のジャン・ド・ダントヴィルで、フランソワ1世が英国のヘンリー8世に送った外交使節だ。右側の男性は、ジャンの友人であり聖職者だったジョルジュ・ド・セルヴで、当時25歳だった彼も、後日、フランス大使となる。

棚の上には、日時計と様々な天文観測器具がトルコ産カーペットの上に置かれており、下の方には地球儀と算術教科書、賛美歌の本と弦が切れたリュートが見える。このようなものは、知識と教養、芸術、宗教を象徴する。特にリュートは調和を象徴する楽器なので、弦が切れたというのはプロテスタントとカトリック、学者と聖職者の対立を暗示する。当時の欧州は、ルターの宗教改革以後宗教対立が激しかったし、科学の発展で知識の確信が揺れていた。だから彼らは、英国がローマ教皇庁と決別することを防がなければならない難しい任務を持ってロンドンに来たのだ。実は絵の中で最も注目すべきところは、下部に描かれたひどく歪んだスケルトンだ。これは「死を記憶せよ」というメメント・モリのシンボルだ。

ホルバインは、権威と知識、教養を備えた大使の肖像に、このように死のイメージを描きいれることで、王の臣下はもちろん、最高の権力者である王も死を避けることができないことを思い出させている。富と権力、世俗の成功がどれほどはかないものかに気づき、平和で謙虚に生きるべきだという教訓を盛り込んだのだ。