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20年間ハツカネズミを研究、体外受精専門家のチャン・スイルKAIST研究員

20年間ハツカネズミを研究、体外受精専門家のチャン・スイルKAIST研究員

Posted December. 28, 2019 08:05,   

Updated December. 28, 2019 08:05

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17日、大田儒城区大学路(テジョン/ユソンク・テハンノ)の韓国科学技術院(KAIST)の実験動物センター1階実験室。約33平方メートルの空間の片隅に小さなプラスチックの筒が置かれていた。その中には、小さな生命体が忙しく動いている。そのうちの一匹をつかまえて手の甲にのせると、頭を上げて手の周りをぐるぐる回った。新薬開発の研究用のハツカネズミだ。一般のネズミとは違って体重が約20グラム(8~10週成体基準)だ。しかし、厄介者とされる一般のネズミとは違って、一匹当たり少なくて数十万ウォン、多くて数千万ウォンにのぼる。

KAISTのチャン・スイルK研究員(45)は実験室で、ハツカネズミと365日共に過ごす。チャン氏は、実験用ハツカネズミを大量に増殖させる体外受精の専門家だ。来年は「庚子年」、ねずみ年だ。チャン氏に感想を訪ねると、「ネズミに対する偏見を捨ててほしい」と注文した。チャン氏は、「嫌われて病気を移す存在と認識されてきたネズミが、今や人間と共生する関係になった」とし、「人間に役立つ新薬のような存在であり、生命科学、医科学の研究などで多く活用されている」と強調した。また「人間とネズミの遺伝子は99%似ていて、新薬を開発する時に必要であるうえ、ハツカネズミのたんぱく質を研究すれば、アルツハイマー、糖尿、高脂血症、がんなどの原因を究明することができる」と付け加えた。

たんぱく質の究明および機作(生物の生理的な作用を起こす基本原理)研究のために使われる実験用ハツカネズミは、「B(ブラック)6」と呼ばれる。ハツカネズミはオスとメスが交尾すれば、普通5~12匹の子を産むが、体外受精を利用すれば200~400匹作ることができる。チャン氏の手で誕生したハツカネズミが今年だけで数万匹だ。実験用ハツカネズミの研究は、ソウル大、延世(ヨンセ)大など他大学と協業する方式でも行われている。このため、実験動物センターに実験用のハツカネズミのための別途の大型空間を作り、センター職員約30人が徹底して管理している。例えば、ハツカネズミの清浄化(無菌化)を維持するために、室内温度は21~23度、湿度は48~68%でコントロールしている。

チャン氏は2013年から毎年500回以上、ハツカネズミの体外受精を行っている。これは容易ではない。これまで7千回近く試みたが、成功したのは3300回ほどだ。チャン氏は、「ハツカネズミの寿命は1、2年しかない。ハツカネズミの精子を再び活用でき、無限に複製も可能だ」と話した。寿命を皆終えたハツカネズミを安楽死させた後、専門業者に依頼して火葬する。

 

チャン氏は幼いころから動物と一緒に遊ぶことが好きだった。故郷の江原(カンウォンド・ファチョン)で犬を飼い、動物に対する愛情を培った。小学校に通う頃には、祖父の家で飼っている牛が特に好きだった。そんなある日、子牛一頭が病んで死ぬ姿を見た後、動物の勉強をしようと心に決めた。2012年に建陽(コンヤン)大で非臨床学修士学位を取得し、忠南(チュンナム)大獣医学部で博士過程を修了した。チャン氏は、ハン・サンソプ建陽大バイオ非臨床大学院長、ヒョン・ビョンファ前オソン実験動物センター長、ユ・ウクチュンKAIST医科学大学院名誉教授らに師事し、実験用ハツカネズミの重要性を知り、体外受精専門家となった。チャン氏は、「恩師から『ハツカネズミが人間を助ける』という人生の教えを学んだ」と語った。

 

チャン氏は実験用ハツカネズミと共にした20年間の経験に基づいて、体外受精に関心がある後輩を養成する計画だ。バイオ産業の発展に向けた青写真も描いた。定年退職した後、バイオクラスターの予定地である仁川(インチョン)の松島(ソンド)国際自由都市に新薬開発研究用のハツカネズミの体外受精施設および実験室を構築する考えだ。チャン氏は、「実験用ハツカネズミは、医学界で人間の生命を生かす高付加価値の動物としての位置を確立した」とし、「2020年にはネズミに対する否定的な認識が変われば良い」と話した。

 今年が黄金のいのしし年だったなら、来年の庚子年は「白ねずみ」の年だ。一般的に大衆が持つネズミの否定的なイメージとは違って、白ねずみはトップを象徴するとされる。来年には実験室のハツカネズミは名誉を回復することができるだろうか。


黃泰勳 beetlez@donga.com