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他人の苦痛

Posted November. 28, 2019 15:20,   

Updated November. 29, 2019 14:52

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ギリシャ神話に出てくるイカロスは、空を飛んで墜落して死んだ悲運の主人公だ。発明家の父親ととともに迷宮に閉じ込められ、鳥の羽根と蝋で作った翼によって脱出する。しかし、もっと高く飛びたい欲望で、父親の忠告を無視して太陽に近づきすぎ、蝋が溶けて海に落ちてしまう。悲劇的で教訓的なイカロスの話は、多くの画家に人気の絵の主題だった。

16世紀、オランダ画家ピーテル・ブリューゲルもイカロスの話を描いた。彼は、聖書やことわざ、神話が与える教訓を諷刺的に表現することに卓越した。しかし、彼の絵からはいくら探してもイカロスが見当たらない。平和な田舎の風景のような絵の中には、畑を耕す農夫と羊の群れをひきいる羊飼い、そして釣り人が登場する。絵の右下にいる釣り人の頭上には大きな帆船が海に浮かんでいる。イカロスはこの釣り人と帆船の間にいる。空から落ちたので、体は海中で見えず、両足だけが水面に出ている。関心を持って見なければ分からないほど小さく描かれた。

 

他の画家たちは、墜落するイカロスを描き、愚かな行動が結局は身を亡ぼすという教訓を与えようとしたが、ブリューゲルは特異にもイカロスの悲劇に対する世の中の人々の姿に焦点を合わせている。誰かが海に落ちたが、絵の中の人物は誰も関心がない。ただ自分のことだけに没頭している。他人の苦痛や死に無関心な世相を風刺した絵である。

絵で最も注目される人物は羊飼いだ。彼が空を見てよそ見をしている間に、羊はあちこちに散り、海に入っている。画家は、イカロス同様、不注意に見える羊飼いの姿を通じて、他人の悲劇は自分に無関係ではなく、いつでも自分の身にも起こり得ることを暗に教えている。450年前の絵が与える教訓は、他人の苦痛に無関心だったり、一夜のゴシップのネタとして消費したりする現代人にも有効に思える。

美術評論家


キム・ソンギョン記者 tjdrud0306@donga.com