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フィンランドの国民の絵

Posted September. 19, 2019 08:21,   

Updated September. 19, 2019 08:21

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二人の少年が、けがをした天使を担架に乗せて運んでいる。目が怪我したのか、天使の両目に包帯が巻かれており、翼からは血が流れている。前の少年はまるで喪服のように、頭のてっぺんからつま先まですべてが黒であり、後の少年は、深刻な表情で画面の外の観客を見つめている。状況が悪いのか、少年たちの表情は暗く、周辺の風景は物寂しい。一体天使はなぜ怪我をし、かれらはどこに行くのだろうか?

フィンランドの画家ヒューゴ・シンベリが描いたこの絵は、多くの疑問を巻き起したが、正解はない。画家は、絵の説明を一切しないことで有名だった。誰かが聞くと、人ごとにそれぞれの方法で、絵を解釈すればいい、という言葉に代えた。それでもいくつか類推して見ることができる。この絵の背景は、今も存在するヘルシンキの動物園と近くの川辺だ。当時、労働者層が好んで訪れていたこの公園の中には、老人ホームや病院、視覚障害の少女のための学校や寮など、多くの慈善団体があった。それなら、彼らは今、天使の治療のために病院に向かうのだろう。

遠くに見える山には、まだ雪が溶けず、だだっ広い野原にはまばらに春の花が咲き始めている。天使は苦痛の中でも、白いスノードロップの花束を手に握りしめている。早春に咲くこの小さな花は、癒しと復活、希望を象徴する。この絵を描く前に、画家も髄膜炎で数ヶ月間、病院で過ごしたので、希望の花を握った天使は、病魔と戦った画家自身の姿を投影したものともいえる。

天使は元々、神と人間の仲介者であり、美術ではいつも完璧な精神的存在として描かれてきた。しかし、シンベリの天使は傷つき、血を流す弱い人間とあまりにも告示している。だから、なおさら身近だ。弱者を助ける博愛主義、フィンランドの自然の風景、癒しと希望のメッセージ、様々な解釈の可能性などを盛り込んでいるからだろうか。2006年、この絵は幸福指数1位の国フィンランドの人々が最も愛する「国民の絵」に選ばれた。