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権力が市民を並ばせる時

Posted June. 29, 2019 09:17,   

Updated June. 29, 2019 09:17

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18日(現地時間)、トランプ米大統領の「2020年大統領選」集会が開かれたフロリダ州オーランドの天候は、トランプ氏のように把握が容易ではなかった。豪雨が降り、太陽が昇ると、70%を超える湿度と30℃を上回る暑さとなった。立っているだけで背に汗が流れた。

主催側は、集会を成功させるために、支持者に列を作らせようとしたようだ。2万人を収容できる会場の入場チケットを無制限に発行し、先着順で入場させるとした。「登録者が7万人を超えた」、「10万人になった」というトランプ氏の広報ツイートを見た支持者は焦らざるを得なかった。集会が始まる40時間前から入場のための支持者の列ができたのは偶然ではない。

企業は、美味しい店であることを知らせるために、ラグジュアリーブランドということを強調するために、意図的に列をつくらせる。人々は「宣伝戦略」だと知りながら、拒否できず、「宣伝の逆説」に陥る。そのような「マーケティング商法」が、民主主義の花である選挙版まで揺さぶるようになって久しい。

30℃を超える蒸し暑さが予告されていたのに、炎天下で立っていなければならない支持者を配慮する陰はなかった。記者が午後12時から列に並び、午後5時頃に会場の入口まで行く間に、目の前で4人が倒れた。ある女性は、顔が真っ青になり、車椅子に乗せられて行った。他の人は担架で運ばれた。人波をかき分けて緊急患者を運ぶ救急隊員も汗を流した。このような状況でも、不平を言わない米国人の政治的情熱と忍耐心に驚かされた。

トランプ氏は翌日、ワシントンで開かれたある集会で、「そこ(集会会場)の外で入場できない数万人の人がいた」と話したが、地元紙オーランド・センチネルは、「トランプ氏の演説約1時間前に会場前の長い列が消えた。人々は集会開始に合わせて、会場に簡単に歩いて入ることができた」と伝えた。CBSレイトショーは、待っていた人々が置いて行った椅子や荷物が残っている会場の外の様子を伝えた。列に並ばなくても多くが入場できたのだ。

20世紀最高の広報専門家とされるエドワード・バーネイズは、「一時世論に影響を与える強力な手段だった大衆講演は、現代社会でその価値が変わった」とし、「宣伝の観点で講演の重要性は波及力にある」と指摘した。講演自体より講演がメディアなどを通じて大衆にどのように伝えられるかが重要ということを説明したのだ。支持者を列に並ばせて勢力を誇示したトランプ氏と大統領選陣営は、この原理を誰よりよく知っていたと見なければならない。

支持者が、トランプ氏をロックスターのように考えて熱狂する理由は明確にある。「忘れられた市民」に代ってワシントンの既成政界を批判する「アウトサイダー」戦略は、既成世代の主流文化に抵抗する反文化の旗を揚げたロックスターのように大衆の心を揺さぶる妙なところがある。トランプ氏は同日の演説でも、先の大統領選を「皆さんの犠牲で自分たちの富を築く政治階級から政府を取り戻す機会」と規定した。しかし、再選挑戦の集会で支持者の犠牲を当然視し、勢いをアピールするような選挙マーケティングは、些細なことかもしれないが権力の本心がどこにあるのか疑わせる。

集会が終わった後に会った支持者らは、洗脳されたかのように声を一つに「議会とメディアに包囲された大統領」を心配した。自分たちに奉仕しなければならない権力が炎天下で並ばせることは当然視し、力を持つ権力の将来を心配する盲目的な市民の姿がどこか不安に感じられたなら、過度な杞憂だろうか。


朴湧 parky@donga.com