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聖女となった悪い男の妻

Posted June. 13, 2019 08:48,   

Updated June. 13, 2019 08:48

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赤いベールを被った女性の肖像画だ。ひととき、仏ルーブル博物館のアートショップで最も売れ筋の絵葉書の一つだった。横顔だが、くっきりとしたラインと優しい眼、ぎゅっと結んだ唇からは、この女性の気品が感じられる。一体、誰の肖像画なのだろうか。

絵の中の女性の名前はファビオラ。悪い男と結婚したローマの貴族である。夫の放蕩と暴力に耐えられず離婚、その後、他の男性と再婚する。今でこそ背中を押される決断かもしれないが、当時は4世紀。離婚と再婚は教会法に背くものだったので、社会的に非難され、教会からも遠ざかってしまった。しかし、2番目の夫が死んだ後は、これまでの世の楽しみを全て捨て、貧しさと病に苦しむ人たちのために献身する。全財産を投じてローマ初のキリスト教病院を設立、浮浪者や放浪する病人など見離された患者たちを受け入れ、看護した。巡礼者のための救護所を設立、情熱的な慈善活動を行い、市民の尊敬を受け、教会からも認められるようになった。ついに、カトリックの聖人として崇められる。しかし、19世紀半ばまでは、完全に忘れられた聖人だった。

その彼女が大衆に受け入れられ復活できたのは、1854年英国の枢機卿が書いた小説「ファビオラ」のおかげ。約30年後、フランスの画家ジャンジャック・エンネルは彼女の肖像画を描いて多くの人にファビオラのイメージを刻んだ。絵の中の赤いベールは贖罪と犠牲、そして炎のように燃えた聖女の情熱と献身を象徴。原作は1912年紛失し消えてもこの肖像画は、世界各地の無名画家によって今でもレプリカが引き続き作られている。

賢い現代美術家のフランシス・アリスは直接描く代わり、レプリカを集め、インスタレーションを作る。1994年から、各国のフリーマーケットや骨董品屋を回って蒐集した模作は現在、500点を超える。ファビオラの肖像画が、引き続き愛され、描かれ続いているのは、彼女が逆境から立ち上がり、自主的に行きた女性のアイコンであり、時代を超えた他者中心の生き方をした模範になるからだろう。



キム・ソンギョン記者 tjdrud0306@donga.com